「ブックカフェ」を構想する。:ふり返り

ふり返り

第1回目の「キャンプ」を終えてから、ふり返りのレポートを書いてもらいました。レポートというかたちではありますが、それぞれが、現場での体験を綴った、「フィールドノート」のようなものです。レポートから、いくつかの論点を紹介しましょう(以下の引用は、提出されたレポートの原文どおり)。

「問題状況」との距離感

「キャンプ」による学習は、「問題状況」との距離が近いという点が特徴的だと言えます。単純なことながら、サイズの実感や空間の把握は、頭のなかだけでは完結しません。見ながら考えて、考えながら見る。その往復運動が、発想を刺激することになります。

そして、何よりも良いなと思ったのは、「小林ビルで、小林ビルのことを考える。」こと。フィールドワークでもいつも思っていたことだが、教室の中で延々考えていてもイメージしにくいことも、その「場」を訪れると、あっという間に、ぼわぼわっとイメージが浮かんできたりする。そして、イメージにリアリティが出てくる、と私は思う。 
レイアウトを考える、というのもそうで、実際に無造作に家具がおかれているところで、「あそこにあれがあったらいい」とか、「こういうことができるんじゃないか」と話していると、単なる思い込み以上に、本当に実現可能な気がしてくるし、逆にどうしたら実現できるのか、具体的にイメージがわいてくる気がした。
04.jpgそれから、個人的には「不便さ」みたいなのが、逆にいいなぁと思った。「いつもの教室」では、いつでもインターネットに簡単に手が届いたり、様々なツールがすぐそばにある。不便さを感じることはあまりないし、正直なところ、授業をしながらほかのことができてしまう。もちろん調べたいことがすぐに調べられるインターネットは便利だし、それによって有益な情報が得られて、新たなアイディアが生まれることも多い。でも、教室では「インターネットまかせ」とか、「人まかせ」が結構簡単に出来てしまうとも言える。キャンプは、情報が限られていたり、人やものとの距離が近かったりすることで「〜まかせ」にできないことが良いのかもしれない。だから時間が経つのがあれだけあっという間に感じたのかもしれないし、糖分が欲しくなったり、終わった後に、心地よい脱力感を感じたのかもしれない。

じぶんたちの「場所」をつくる

また、「キャンプ」においては、それぞれのグループの「場所」づくりも重要な役割を果たします。話し合いをするための雰囲気はもちろんのことですが、じぶんたちの「場所」から、何が見えるか…によって、議論の方向性も変わるのかもしれません。

なんとなくの印象でしかないが、各班の成果が、グループワークをやっていた場所に影響されていたように思う。どういうことかというと、自分たちのテーブルを置いていた場所を中心にコンセプトやレイアウトが考えられていたように感じられたのだ。自分の班で言えば、小林ビルの道を渡った反対側にあるバス停を利用する人のことが念頭にあったし、各班の見取り図をみると、入り口付近に場所を取ったグループは入り口を中心に、奥の方で作業していたグループは奥の方を重視していたような印象を受けた。きっといろいろなことが影響しているから一概には言えないけれども自分が立っている場所を中心として、そこから見えるものがさしあたり自分のいる世界=意識の届く範囲として表れてくるのではないだろうか。そんなことを考えたりした。

「道具立て」の重要性

もうひとつ、忘れてはならないのが、「キャンプ」のための「道具立て」です。机にかぎらず、どこに出かけても、じぶんたちの「場所」をつくるためのモノがあるはずです。

つくえってすごい。2438558836_70f8e767af.jpg
小林ビルでのキャンプを終えてそう思った。
小林ビルはほんとうにがらんとしていて、「魅力的な空間」としての機能を果たしてはなかった。コミュニケーションが活性化されるような仕組みがなにもなかったからだ。こんなとこをみんなが集まる場所にできるのかとすこし不安になったくらいだ。弱気な心を胸にスチールのつくえをメンバーと囲んだ。そのとたん、私はみんなと話したり考えたりすることに夢中になった。ふとここが「あの」小林ビルだということを思い出して周りを見渡してみると、それぞれのグループもつくえを囲んでものすごいさかんなコミュニケーションをしている!小林ビルがちょっと「魅力的な場」に見えてしまった。
魅力的な場をつくるってできるの?一からみんなが来てくれるような空間なんて造れるの?いままで実はそう思っていた。でもつくえがあるだけであんなに楽しそうにコミュニケーションをとって、さらにはコラボレーションしている。完璧な空間をプロデュースするのではなくて、ちょっとした仕組みをポイッとおいておくだけでもいいのか、と気づいた。コミュニケーションの形が限られた空間より、汎用性の高く利用する人がそれぞれの活動の形をつくれるほうが成長する場所なのではないか。というか、キャンプの真髄ってもしやここなんじゃないか。(違ったらごめんなさい)みんなの飛び交う声を聞きつつ、こんなことを思った。 

※全員のふり返りレポートは、「場のチカラ プロジェクト」のウェブからダウンロードすることができます(メンバーのみに公開:パスワードが必要です)。
「キャンプ01(2008年4月17日実施)」ふり返りレポートLinkIcon

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01:「ブックカフェ」を構想する。
2008年4月17日(木)

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