たんぽぽ
慶應義塾大学 環境情報学部 加藤文俊研究室
フィールドワーク展ⅩⅢ たんぽぽ
2017年2月4日(土)~6日(月) 11:00~21:00(最終日のみ15:00まで)
BUKATSUDO


About


肌寒い冬が終わると、一年ぶりの春がやってきます。
この展覧会が終わる頃には、道ばたに小さな花がそっと顔を出していることでしょう。

この一年間、私たちはたくさんのまちを訪れ、多くの人と出会いました。
どのまちにも「居心地のいい場」があり、心が揺さぶられる時を過ごしました。
そんな時、わたしたちが大切にしてきたのは、
愛をもって現場にのぞみ、ていねいに観察・記録をすること。
フィールドワークの経験を、まちに還すこと。

その姿勢は、まるでタンポポのようだと言えるかもしれません。
道ばたに根をはり、ささやかに花を咲かせるタンポポ。
ありふれているけれど、とびきり強くてしなやかな雑草です。

タンポポはやがて綿毛をつけ、どこか遠くへ飛んでいきます。
いつしか綿毛はまちに還り、再び花を咲かせます。
わたしたちの活動も、綿毛のように飛んでいってくれたら…。

たくさん、飛ぼう。
そんな想いを込めて、フィールドワーク展を開きます。



Message
加藤文俊


毎年、卒業をひかえた学生たちが中心になって
「フィールドワーク展」のタイトルを決める。
これまで、集うことの価値や出会えたよろこびなど、
一緒にいることを愛おしむようなタイトルが多かったのだが、
今年の『たんぽぽ』は、すでに飛び立つことを待ち望んでいるようだ。
思い出をふり返り、一体感を味わうことなく
風に身をまかせたいのだろうか。

きっと、学生たちは「別れ」の大切さを知っているのだ。
いちど去らなければ、また戻ることができないという、
旅の本質をわかっているのだ。ありがとう。👋

加藤文俊



Contents

かとう研の壁 :かとう研の壁;
みなとみらいでのフィールドワーク、ポスターづくりをおこなう「キャンプ」、風俗採集。冊子の編纂や展示など。相変わらず、楽しく忙しく過ごしました。いろいろな場所に出かけて、たくさんの人にも出会うことができました。すべてが形になっているわけではありませんが、成果物をひと筋の流れとして壁に並べてみます。この1年間の活動をふり返るだけではなく、ぼくたちの重要なテーマである「まちに還すコミュニケーション」について、あらためて考えるきっかけになるはずです。

スケッチブック :スケッチブック:
書くことはもちろん、描くことも大切です。文章は、はじめから終わりまで一直線に流れるものですが、図解やスケッチは、(ことばに頼らず)ひと目で全体を表すものです。文章を綴るときの直線的な思考ではなく、俯瞰し、つながりや関係性、配置や分布を意識しながら向き合う必要があります。日頃からスケッチブックにノートを取ったり、アイデアをまとめたりしている人もいるので、じつはそれほど画期的なことではないのですが、4月から全員で「おそろい」のスケッチブックを使いはじめました。ページを繰りながら、1年間をふり返ります。

いけずなまち :いけずなまち:
2016年度は、「いけずなまち」というテーマで、ランドマークタワーを中心に半径500メートル圏内のフィールドワークをおこないました。ここでいう「いけず」は、まちに偏在する、さまざまな不便や不具合を指すことばとして用いています。同時に、「いけず」は、どこか憎めないような、ある種の親しみやすさを感じさせることばでもあります。まちへの想いを支えに、ぼくたちの知恵と工夫を動員すれば、「いけず」とうまくつき合ってゆくことができるかもしれません。3つのグループが、それぞれの感性と方法でフィールドワークの成果をまとめました。
(グループワーク)

姉妹の暮らし :姉妹の暮らし:
多くの姉妹は、幼い頃、同じ屋根の下で育ちます。よく一緒に遊んできた姉妹、あまり干渉し合わない姉妹…ひとことで『姉妹』といってもその実態は様々です。 わたしは、2016年4月から12月までの9ヶ月間、『レシート』を集めることによって、ある2人暮らしをする2組の姉妹の生活を追ってきました。たくさんの情報がつまった計1600枚におよぶレシート1枚1枚と向き合い、時に思いを馳せ、想像を巡らせながら2姉妹4人の暮らしを覗いてきました。1つ屋根の下で彼女たちが繰り広げてきた姉妹の関係を浮き彫りにします。
(土屋麻理)

365日の
コンプレックスライフ :365日のコンプレックスライフ:
素敵な女の子になりたい。きっと誰もが願うことだと思う。自分をしっかりと持っていて、好きなものは好き、嫌いなものは嫌いだとはっきり伝えることができて、それでいて棘のない女の子。ただそれだけのことを強く願いながら、2016 年 1 月1日から1年間、自分自身の暮らしと向き合うプロジェクトを行うことにした。雑誌や映画や暮しのヒント集を参考にしながら「わたしにとってのいい暮らし」を見つけるための過程で、コンプレックスだらけのわたしの姿が見えてきた気がする。
(檜山永梨香)

行きたくなる店とはなにか :行きたくなる店とはなにか:
あなたは「行きつけの店」を持っているだろうか。美味しいから、雰囲気が好きだから、店主と仲良くなったから、など様々あるが皆それぞれの理由で店を好きになり、足を運ぶようになるのである。 その店に通いたい、居たいと思うことは、店に「居心地がよい」という感情を持っていることであるとわたしは感じる。店が持つ様々な何かが「居心地のよさ」となり、私たちの心を掴むのだ。 これは、わたしが1年間ある店に行きつけ、その結果得られた「居心地のよさ」について考えるプロジェクトである。
(井上涼)

宇都母知の風 :宇都母知の風:
ひとを知り、まちを知る。これが、私のやりたいことでした。 ふつうの人間である私が、ふつうの人びとのことを知るためには、自らがふつうである状態から脱する必要があります。 そこで私は、うたうことにしました。 神奈川県藤沢市にある「古民家食堂ごんばち」を舞台に、うたって、話して、フィールドワークを重ねました。「うた」というちいさなメディアを通して、人びとと出会い、社会への理解を深める。そんな方法の探求と実践の日々でした。 今回は、12ヶ月にわたるフィールドワークの体験をもとに綴った12篇の物語をお届けします。
(此下千晴)

はじまりはキャッチボール :はじまりはキャッチボール:
家族とのコミュニケーションについて考えたい。そう思った私は、野球が好きな高校生の弟とキャッチボールをすることにした。 会話は「ことばのキャッチボール」だと聞いたことがある。相手のことばを受けとめたうえで自分も話すことが大切だ。 キャッチボールしながら会話をしたら、その2人のあいだに行き交うことばとボールから何か見えるだろうか。 当たり前すぎて考えたことがなかったけれど、姉弟のコミュニケーションについて見えることを、キャッチボールから探してみる。 19年間一緒に生きてきて最初で、たぶん最後だ。
(武市陽子)

連れてって :連れてって:
コミュニケーションへの関心は、場づくりの実践と直結しています。ぼくたちのコミュニケーションは、かならず〈いつか・どこか〉で実現しているからです。〈いつ・どこ〉を丁寧に考えるからこそ、コミュニケーションが息づくのです。そして、ちょっとした小道具があれば、時間や空間のありようを変えることができます。「連れてって」は、コミュニケーションをうながす、(持ちはこびが容易な)「ちいさなメディア」について考えるプロジェクトです。2017年度の「予告」をかねて、いくつかの習作を展示します。
(加藤文俊)

移動する「家族」
(”Families” on the move) :移動する「家族」(”Families” on the move):
人がかつてないほど「移動」するようになりました。「移動」には、通勤、旅行、移住などの「空間的な移動」もあれば、職業や役割などの変更に伴う「社会的な移動」もあります。こうした「移動」の中で、私たちはどのようにして、大切な人びとと関係を結び、維持しているのでしょうか。国境をまたがるトランスナショナルな交流によってつながる「家族」のストーリー(映像作品)を通じて、このことについて考えます。(2016年度日本生活学会生活学プロジェクトおよび慶應義塾大学博士課程学生研究支援プログラム助成対象)
(大橋香奈)

day_by_day_postit :day_by_day_postit:
ポストイットに絵を描き、どこかに貼って写真を撮り、Instagramにアップロードすることを続けてきた186日間の生活記録。「大学院生は普段何をやっているかわからない。」学部生と話していると必ず出てくる言葉だった。特にSNSを絶っていたわたしはより一層「生活感のない人」ということになっていた。先生からも個別に「もっと生活感を出した方がいい」と言われたほどだ。自分自身の生活を発信してみることは加藤研2年目のわたしの個人的な目標であったが、結果的に「生活とは何か」を考えることにつながった。
(松浦李恵)

新宿ゴールデン街の
エスノグラフィー :新宿ゴールデン街のエスノグラフィー:
かつて「文化人の街」として知られた新宿ゴールデン街。約280もの店がひしめく街で、私はある一つの店にアルバイトとして滞在し、フィールドワークを行っています。2000年以降はニューウェーブと呼ばれる世代が街を盛り上げ、外国人観光客の増加とともに街の様相は大きく様変わりしています。そんな中で、この街ではどのような文化が育まれ、受け継がれているのか。店と店はどのような関係を結び、「街」を形成しているのか。店に何度も通う中で見えてきた、暗黙のルールや街ならではの作法などを通して、少し敷居の高い、ゴールデン街の一部をご紹介します。
(大川将)

「プチ定点観測」@加藤研 :「プチ定点観測」@加藤研:
2016年秋、縁あって、加藤研のメンバーになりました。メディアやコミュニケーションを学ぶゼミです。 ファッションを筆頭に、持ちものはその人を表すメディアといいます。 今回、残念ながら半年しかいっしょに学べない卒業生を、長年研究している「定点観測」という手法の一端を通して「知る」ことを展示とすることにしました。彼・彼女らの卒業作品を補完する資料になりましたら幸いです。
(高野公三子)



Access
BUKATSUDO
横浜市西区みなとみらい2丁目2番1号
ランドマークプラザ地下1階
みなとみらい線「みなとみらい」駅 徒歩3分
JR市営地下鉄「桜木町」駅 徒歩5分


展覧会のお問い合わせはこちらまで
mail: fklab16@gmail.com
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