慶應義塾大学 加藤文俊研究室

フィールドワーク展XIX
たゆたう

2023年2月23日(木)〜26日(日)
11:00〜19:00(最終日15:00まで)


ごあいさつ

「たゆたう」によせて

展覧会のタイトルが、「たゆたう」に決まりました。 居場所が定まらず、迷ったり決められなかったりする。 そんな、不安にみちたことばで語られていたので、最初はちょっと消極的な印象を受けました。 でも、しばらくすると、日ごろ考えていることと「たゆたう」が緩やかにつながって、じつは大切な姿勢を表すことばのように思えてきました。

ぼくたちは、人とかかわり合う日常のなかで、いくつもの〈顔〉や〈声〉を持っています。それ自体はごく自然なことなのですが、 ことなる〈顔〉や〈声〉へと移ろうときには不安を感じることがあります。 あちらでもこちらでもないように思える。そんなときこそ、揺らめく海面に身をあずけるように揺蕩ってみるのです。 不思議と浄化されたような気持ちになって、じぶんの〈顔〉や〈声〉がくっきりと見えてきます。 19年目の揺蕩いは、記念すべき20年の節目を迎えるための準備なのかもしれません。

ようやく、対面での活動が本格的に戻って来ました。会場で、みなさんに会えるのを楽しみにしています。

加藤文俊


展示紹介

渋谷のプリズム

加藤研の学部2、3年生は、半期ごとに変わるテーマにそってグループワークを行っています。
2022年秋学期のテーマは「渋谷のプリズム」。プリズムとは時間地理学のモデルに基づいた時間と空間を簡略的に示した概念です。 渋谷というフィールドでプリズムという共通言語を用いて、各々のグループが解釈し、形にしてきました。 渋谷という街の見方がすこし変わるかもしれない展示物の数々です。

自分ひとりの机

岩崎はなえ

同じ女子校出身者だと、なんとなく通ずるものを感じてしまう。 言葉にしなくても、なにか共有しているものがある気がする。 これまで教育制度の面からしか語られてこなかった女子校という空間を、記憶や経験という主観的なまなざしによって捉えなおそうとするプロジェクトです。 「女子校最高!」の背景にある具体的な経験に着目することで、今の社会における「女だけの空間」をめぐる対話を見出していきます。

彼岸への道を探る

今村有里

自立していて理性的で強くあることが求められる社会で、「ケア」の可能性を考えたい。 それが卒業プロジェクトの始まりでした。私の体験した日常の中のささいな出来事を複数記述し、その複雑に絡み合った事象を広義の意味でのケアという言葉で概念的・抽象的に紐解きました。 個人ではままならない現実があること、その弱さを受け止めて誰かとの関係性の中に自分を位置付けること、その価値の問い直しを試みました。

札幌と私の生活史

大河原さくら

札幌で出会った人々の生活史と自己の生活史、2冊の本を製作しました。 生活史とは、個人の人生の語りのことです。大学を休学して札幌で暮らした1年間は、自分にとって回復と受容の日々でした。 その日々に関わった人々の人生の語りを聞くことは、他者を通じて自己を受容することでした。 2冊を一緒に読むことで、その過程が垣間見えるはずです。

「ぬ、まずい。」

藤田明優菜

同じ空間をともにしているとき、私たちはどのようにかかわり合っているのでしょうか。 私たちは意図せず心の内が身体動作として表面化してしまったり、反対に表情やしぐさから相手の状況を読み取ろうとしたりします。 発話に加え、身体的にもコミュニケーションし続けている私たちのかかわり合いは、あたりまえのようで、客観的に見ると上手にできすぎていてふしぎなものです。 友人とワンピースを製作する様子を映像で記録し、身体を伴うやりとりについて考察しました。

私の100個の物語

磯野恵美

音楽家、大学の助手、会社員、そして大学院生。パラレルな毎日。 目まぐるしく過ぎていく日々に少しだけ抵抗しながら時間を巻き戻し、私が3歳〜現在31歳に至るまでの個人的な物語をできるだけその当時の感情に立ち返って書き起こすことを試みました。 とるに足らない話もあれば、それなりに人生の転機になるような話もあります。 決してドラマチックではない私の人生の途中経過は人々にどう映るのでしょうか? また何を思うのでしょうか?物語を通して会場でおしゃべりができたらと思っています。

かとう研の壁

「加藤研は何をしているのかよく分からない」という声をよく聞きますが、「かとう研の壁」では1年間の活動をタイムラインに沿って俯瞰することができます。
地方に滞在しポスターを作る「キャンプ」の活動や、今年ようやく復活した、研究会後に食卓を囲む「ごはんP」の活動など。 移動の範囲が徐々に広がってきた今年、加藤研が1年の流れの中でどのように動いていたのかを振り返ります。

300moji

ふとした思いつきで原稿用紙をあつらえて、300文字作文をはじめました。
きっと「ステイホーム」の窮屈さに疲れて、ちょっとのんびりした時間をつくりたかったのだと思います。
気取らず、気負わず、橋本義夫のいう「ふだん記」のつもりで、日常の出来事を綴っています。
2年間で150本ほどの原稿を書きました。同じようなことを、たびたび書いているような気もするのですが、あらためて、これまでの軌跡をふり返ってみます。

ジブン(ジ)テン

加藤研に代々伝わる「ジブン(ジ)テン」
これは2009年に卒業されたフジイハルカの卒業プロジェクトとしてはじまり、彼女が卒業した今も続いている終わりのないプロジェクトです。
このジテンには、特定の個人の記憶や経験を象徴する言葉をショートエッセイで綴ったものが収められています。
ページをめくれば、時と共に変わる言葉、変わらない言葉。ジブンにはない言葉。
個別具体的な物語を持った歴代の加藤研の仲間に出会うことができるでしょう。今年は磯野恵美が担当します。

モバイル・メソッド

「モバイル・メソッド」は、石川初さん、水野大二郎さんとともに開講している大学院の「アカデミックプロジェクト(AP)」と呼ばれる科目です。
ぼくたちの移動にかんする研究や調査方法について議論するとともに、まちなかでさまざまな実験的な試みをすすめています。 今回は、受講生のグループワーク(2022年度春学期)から生まれた、「してんビンゴ」という移動体験を豊かにするメディアを紹介します。

ポスターのポスター

全国を巡りながら、「キャンプ」と呼ぶワークショップ型のフィールドワークを20年近くすすめてきました。
まちに暮らす人びとの想いや生きざまに触れ、調査の成果物としてポスターをつくって還すという過程で、日常生活の豊かさ、複雑さと向き合うことになります。 A1サイズに印刷されたポスターは、私たちのコミュニケーションを促します。
ここ数年は思うように活動できていませんでしたが、今年度は宿泊を伴うかたちで実施できました。

ぷちプロ

昨年の夏、家の近くの半径500メートルをひとりで隈なく歩くことにしました。
ふり返ってみると、やや衝動的に始めたこの活動は、やってみたいと思った理由もあちらこちらに散乱していました。
きっと、暮らしはじめて日の浅いあのまちと自分との間に、なにか確かな結びつきを探し求めていたのだと、夏をふり返りながら秋を過ごした今は捉えています。
私が垣間見たあのまちの細片が、今度は同じまちやどこかのまちの誰かと繋がるきっかけになるかもしれないことに、ひそかに心を躍らせています。


日時・会場

日時 2023年2月23日(木)〜26日(日)
      11:00〜19:00(最終日15:00まで)

会場 ギャラリー LE DÉCO(ルデコ)

      東京都渋谷区渋谷3-16-3 髙桑ビル3階 4階
      JR渋谷駅新南口 徒歩3分
      東横線・副都心線渋谷駅C2出口 徒歩4分


ご予約

事前予約のお願い

フィールドワーク展 XIX 【たゆたう】は感染拡大防止のため、ご来場のみなさんに事前予約をお願いしています。

* 状況により、入館方法や内容を変更する場合があります。あらかじめご了承ください。

予約サイト(Peatix)

お問い合わせ

以下のアドレスまでご連絡ください。

fklabsfc [at] gmail.com