2013年2月8日(金)〜10日(日)
11:00 〜 20:00 (最終日のみ〜17:00)(予定)
会場:Galleryやさしい予感
(東京都品川区上大崎2丁目9-25)
同時開催:第7回加藤文俊研究室OB展
主催:慶応義塾大学環境情報学部 加藤文俊研究室

私たちそれぞれがもつ疑問や問題は、
机のうえだけで解決できるものばかりではありません。
愛をもって現場にのぞみ、つぶさに、ていねいに観察・記録すること。
わたしたちはこのことをつねに大切にしてきました。

それは、相手のことを想いながら、
じっくり、ゆっくり、丹念に料理する、
おいしい「おでん」のつくり方にも似ています。

一見ばらばらのように見えるそれぞれの疑問や問題が、
「フィールドワーク」というだしの中でじっくりと煮込まれることで
どんな味を出しているのか、
鍋の中の具を選ぶように楽しんでいただければと思います。

今年で9回目を迎えるフィールドワーク展では、
2、3年生は「工夫と修繕」をテーマにしたグループワーク、
4年生は卒業プロジェクトの成果を展示いたします。

体と体を寄せあって、みんなでひとつの鍋をかこむときのように、
この展示会がみなさんの笑顔の中心になれることを願って。


今年度も、無事に「フィールドワーク展」を開催できることになり、とても嬉しく思います。9回目の展示のテーマは、「おでん」に決まりました。
いくつもの個性的な具がひとつの鍋に入ったとき、どのような味になるのか。主張がぶつかると、味が調わない。だからといって、遠慮しすぎると味気ない。「全体として」のできあがりが、気になるところです。
どのような「おでん」になったのか、じっくりと味わってみたいと思います。そしてなによりも、「おでんは、誰かと一緒に鍋を囲むから美味しいのです。賑やかに、みんなで味わうことのできる、思い出ぶかい時間になることを願っています。

加藤 文俊


住まいの採択

自分の住まいを探すなら、あなたはどんな所を選びますか?

住まいを選ぶときに、私たちがよく利用するのがインターネットの物件検索サイトです。しばしば、どのサイトにも載っている部屋の条件をもとに探しても、実際に行って見てみると、条件は揃っているはずなのにどうもしっくり来ないことがある。理想の住まいを選ぶのに、検索サイトの条件だけでは決め手にならないのです。

では、私たちが住まいにあってほしいと思う条件は何でしょうか?
それは意外にも、通りのパン屋の匂いや、子供たちが元気に遊ぶ声が聞こえる公園など、何気ないまちの日常だったりするのです。
そして、そんな「住まいのこだわり」は、違う環境を生きてきた人それぞれで違います。それは、言われなければ考えないけれど、実は住まいを考える上でとても大切なこと。

あなたの理想の住まいはどんな所ですか。あなたの見えないこだわりを、みつけてみてください。

相原 瑛里

つぶやき便

「パピロってなんですか?」

 それが、筆者と三宅村との関係を深めることになったきっかけだった。

 東京都三宅村。人口約2700人、火山とともに生きている島には、昭和42年から続くパン屋がある。島を初めて訪れ、「パピロ」という不思議な名前のパンを知り、 それを製造する「築穴製菓」と出会った。そして2011年8月、その出会いをきっかけに「築穴製菓」で住み込みアルバイトをすることになった。

 そこから見えてきたのは、噴火を経ても島に住みたいと強く思う若者や多くの高 齢者、島に魅了され移り住んできた人びとが逞しく生きる姿だった。老若男女問わず、彼らが日常的に手にしている「築穴製菓」のパンを村民同士 がつながるメディアとすることで、多くの村民に共有され、日常のなかにコミュニケーションが生まれるきっかけをつくろう。そんな想いから生ま れた「つぶやき便」、どうぞ手にとってみてください。

上地 里佳

ランウェイ

「三高祭に行くの?それなら、ファッションショーは絶対観なきゃね」

 地域の方の声を頼りに訪れた、三宅高校ファッションショー。これは今でも鮮明な記憶を呼び起こさせるくらい、衝撃を与えるものだった。
 華やかな音楽を交え、次々に目の前を通り過ぎてゆくストーリー。うつくしい色とりどりのドレスをまとうモデルの歩くランウェイは、特別な輝きを放っている。どこかをぎゅっとつかまれる、そんな感触のあるショーだ。

 この出会いに引き寄せられたわたしは、ひと夏を彼らと過ごし、彼らがショーをつくる「場」をつぶさに見てゆくこととした。彼らは、「無いから諦める」という思考回路をもっていない。あるもののなかでショーをつくる工夫や技術を、日常的なコミュニケーションのなかから習得している。
 彼らの些細なふるまいや言葉の記録。これらからは三宅村の文化が浮かび上がると同時に、私たちの日常的なコミュニケーションとも繋がりをもつはずだ。

大西 未希

女性車両の考現学

電車をフィールドに選び観察を重ねていると、他の車両とはなにやら雰囲気の異なる車両があります。ピンク色の張り紙が特徴的な車両です。

電車の中のちょっと不思議な空間「女性専用車両」。朝と夜のある時間だけ現れる、ウィメンズ・ワールド。法律ではなんの決まりもないのに、なぜか男性がのけ者にされます。全ては「女性だから」許されている。いや、許されることになっている。この車両が作られた目的は痴漢対策だったはずが、それ以上の何かを生み出しているような気がしてなりません。

果たしてここは他の車両と何が違うのでしょうか。

女性専用車両とそれ以外の車両での観察結果を、今和次郎の考現学にのっとり、スケッチとともにご紹介します。ご一緒に、覗いてみませんか。

川村 恵理

明後日(あさって)

この間の震災以降、
「本当に大切なもの」について考えることがあったかと思います。
理想と現実の間で、悩むこと、
今日や明日に追われて、
大切なものをないがしろにしてしまいがちな日々を
送っていることもあるかと思います。

ここに出てくるのは、みんなとても気持ちの良い人たちです。
自分の大切にしたいことを、その通り大切にしている人たちです。
それはとても筋の通った、素直な生き方です。
彼らの大切にしていることは、
本当は誰もが大切にしたいことのようにも感じました。
わたしは素直に、そんな彼らをかっこいいと思いました。
彼らの生き方は、これから社会に出て、
どう関わっていこうかと悩むわたしに、
勇気や希望をくれました。

大切なことをちゃんと大切にできるって、
とても素敵だと思いませんか。

黒瀬 万里子

音楽一家に生まれて

父はフルート奏者。
母はヴァイオリニスト。
姉もヴァイオリニスト。
僕は野球少年。
音楽の話になると、いつも蚊帳の外だった。

しかしある日、
「オペラの脚本書いていい?」
近いようで遠かった場所へ、勇気を出して飛び込んだ。

舞台となるのは横浜室内合奏団。
父が主宰し母と姉も所属する、
僕が生まれる前から続く、10人程度の室内楽団。
合奏団名物であるオリジナルオペラの脚本を書き、
メンバー全員のポスターを作る。

ただ見るだけだった演奏会に、
自分が動かす場所が生まれた。
22年の時を経て、はじめて音楽会をつくる側に立った、
音楽一家の長男の記録。

06

POSTRAM

まちにはいろんな人がいます。
古くから続くお店を守っている人、まちのためになにかしようとしている人、あるいはそんな人たちを温かく見守っている人。
私は富山で活気あふれる場づくりについて考え、まちをつくりあげている「人」そのものに焦点をあて、魅力を探り、伝える活動をしてきました。人を取材し、そこから見えてきた魅力を写真とことばで表現し一枚のポスターに落としこんでいきます。ポスターのなかに入る人たちは決して特別ではなくいわゆる「ふつうの人」たちです。まちに住む人にとっての日常のひとコマを「よそ者」である私たちが切り取り伝えていく―。

去年の秋に実施した「富山キャンプ」では16枚のポスターをつくることができました。その後も様々なカタチで活動は継続されています。そしてこれから先もこの活動が、まちに多くの温かさを残していくことができますように。

新飼 麻友

この気持ちはなんだろう

我が家には、1994年から1999年までの間に撮影されたホームビデオが残っています。

父によって撮影されたそれらのビデオには、私が幼少期に過ごした様々な場所、年、そしてふるまいが記録されていました。
しかし、あらためて見返してみると、そこには記録されることのなかったものもあったことに気づかされます。

当時は決して客観的に見る事のできなかった、自分自身の姿。それらを観察し、記録をしていると、記憶が鮮明によみがえって来ます。
そして、幼少期特有の無言のコミュニケーションの意味が、理解できるようになりました。

ビデオには記録されていない、あの頃の心の声。「あの時実はこう思っていた」こと。そんな幼少期の「気持ち」を、当時の映像に乗せて22歳の私が吹き替えます。

関取 花

Guide 4 you!

まちにはいつも、多くの変化やきっかけが転がっている。
意識をせずにまちをあるいていると気付くことができないが、まちを見る視点を少し変えてみるだけで、見慣れたまちの中にも多くの発見やきっかけがあることに気付くはずだ。

例えば誰かを想いながらまちをあるくことで、まちにある日々の小さな変化を発見できるだけでなく、自分と人や場所の関係について考えるきっかけが見つかるかもしれない。

卒業プロジェクトでは、まちをあるくときに使えるツールを作成し、まちあるきがその場所にある魅力を発見すると同時に、自分と人や場所との関わりを考えるきっかけになりうることを感じてもらいたい。
また、実際にツールを使ってみることで、まちをあるくことの楽しさを体感してもらいたいと思う。

高木 静香

旅立ちの前に -40色の大学生活-

今まで海外を転々としていた私に、「東京での生活ってつまらなくない?同じ髪の色に同じ肌の色。同じ歩き方に同じ話し方で。」とよく聞かれることがある。

確かに一見似ているかもしれないけれど、それでも一人ひとりの話をじっくり聞いてみると、その人にしかいない言い回しや、「色」が見えてくる。インタビューは、1時間半の会話の中で、色々な人の生活も疑似体験できる一番の方法であり、私の生活の一部だった。
大学時代は、その人の生き方が一番現れる時間だと思う。高校生の時よりも自由に時間の使い方を考えることができて、その時間の使い方によっては社会人になってからのその後の人生にも大きな影響がある。自分が大学4年間を過ごしてみたけれど、他の人はどうなのか、どんなことを考えて今ここにいるのかが気になった。

この1冊には、全く異なる生活を送っている40人の大学生の記録が収録されている。一人ひとりのインタビューには、印象的な言葉がキャッチコピーとして付いている。
「もしも自分がこんな生活だったら…」
「こんなことを考えている同い年がいるのか!」
「自分にはなかなか縁がなかった世界だけれど、面白いな。」
そう思って手に取ってもらえたら、嬉しいです。

蓬生 まり

酒屋の群像

あなたが昨日の晩に飲んだそのお酒は、どこで買ってきたものだろうか。
スーパー、ディスカウントストア、デパート、コンビニ……。
いつしか、「酒屋」という存在は影の薄いものになっている。

――「酒屋」ということばがなくなるかもしれない。

そんな気持ちで、「酒屋」のいまを伝え、そして後世にのこすために、
わたしはインタビューをはじめた。

家族の話、教育の話、人生の話、個性の話、まちの話。
彼らは個別具体的な仕事論を語っているようで、
それはけっしてそのひとの仕事だけに関わることではなく、
私たちの生活のなかの様々な問題を解決するヒントとなることであふれている。

酒を売る、つくる商いにたずさわる人びと7名へのインタビューをもとにした、
ていねいな聞き書きの記録。

丸本 智也

渋谷ノオト

まちについて語る方法は、たくさんあります。ふと、じぶんが暮らす渋谷のまちについて、語ってみたいと思いました。
なるべく負担にならず、少しずつでも続けられるように、「#渋谷ノオト」というタグをふくめて120文字で、渋谷のまちを綴ることにしました。

目にした風景、学生時代からある店、道行く人びと。春からつぶやきはじめて、ようやく85件になったので、それらを束ねると、ちいさなノオトができました。まちが変わったのか、それともじぶんが変わったのか。
ノオトを眺めていると、季節の変化やじぶんの行動範囲がわかります。

そして、細片をつなぎ合わせて、あたらしいまちの理解をつくるプロセスは、なかなか楽しいものです。

加藤 文俊

ジブン(ジ)テン

いまの自分は、一体何と何からできあがっているのか。

そんなささやかな問いからはじまった、ジブン(ジ)テン。

「ジブン」のかけらをひとつずつ手繰り寄せ、ことばにする。

4人がそこに綴ったものはとても私的だが、ときに重なっている。

自分について想いを巡らすと、それぞれが生きた”時”にふれることもできる。

これから、わたしたちの「ジブン」のかけらをくわえていく。

5度目の、

「ジブン(ジ)テン、つくります。」

青山 大毅、龍山 千里、笹野 結衣

工夫と修繕(devices and mends)

毎学期、2・3年生はグループに分かれてフィールドワークの課題に取り組みます。

この秋は、銀座1丁目〜8丁目界隈を対象に、人びとの「工夫と修繕」を採集することにしました。
モノの置きかた、転用、組み合わせ、改変など、日常生活のなかに見え隠れするさまざまな「工夫と修繕」は、人びとの豊かな創造力の表れです。

一連のささやかな試みから、どのような「物語」を思い浮かべることができるか。それは、ぼくたちの想像力にかかっています。
「工夫と修繕」に気づくようになれば、まちは、いままでとちがって見えくるでしょう。この課題は、早稲田大学佐藤洋一ゼミ(社会科学部空間映像ゼミナール)と合同ですすめており、成果はそれぞれの研究室の展示で、併せて紹介します。

二、三年生グループワーク

おかん

”おふくろ”の味はずっと変わらないように、
学びの場から離れても、変わらない加藤研の味。
現役の具たちを温かく見守り、味を伝える「オカン」としての役割、
そしてかつての仲間とおでんをつつくのに欠かせない
「お燗」のような温もりをもつ展示にしたいという想いを込めて、
今年のOB展のタイトルを「おかん」としました。

OB・OG展


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