うごけよつねに

Stay Mobile and Carry On
 
 
Video: 大橋香奈(http://yutakana.org/)

続けるために必要なこと

友だちと続けている「カレーキャラバン」は、まもなく7年目をむかえる。鍋とスパイスを携えて、全国のまちを巡りながら、出かけた先々の食材でカレーをつくってふるまうという活動だ。これまでに、70回ほど実施した。月に一回くらいのペースだが、つまりは70回の設営と撤収をくり返してきたということだ。カレーをつくることはもちろん大切だが、続けているおかげで、旅の〈しかた〉について、いろいろなことに気づくようになった。
 
「カレーキャラバン」にかぎらず、さまざまなプロジェクトで、持続可能性が問われることは多い。とりわけまちや地域にかかわる活動の場合には、ある程度の時間をかけないと、その意義や意味を実感できないからだ。活動そのものが楽しいことは、大前提だ。くわえて、ぼくたちが路上でカレーをつくりながら学んだ「続けるコツ」は、できるかぎり身軽になることだった。
 
活動をはじめてから数年で、器財や道具が増えた。じぶんたちですべてをまかないたいという欲求が強かったのだろう。多少なりとも現場で調整できると思いながらも、たくさんのモノを持ちはこぶようになった。結局のところは、使わずにクルマに載せたままのモノもいくつかあった。万が一に備えて周到に準備することは、忘れずに心がけたいと思うが、じぶんたちで所有したり持ちはこんだりするモノをスリム化することこそが、続けるために必要なのだ。そして、そのスリム化は、出先で調達すること、誰かに助けてもらうことなど、人と人とのかかわりによって実現する場合が多い。ぼくたちが直面するさまざまな課題は、信頼関係を培い、コミュニケーションをとおして乗り越えることができるはずだ。そう思った。
 
これまで「ちいさなトラック」「引っ越しの準備」「爽やかな解散」「連れてって」など、つねにぼくたちの移動(移動性)に関心を寄せてプロジェクトを実施してきた。その流れをふまえて、2017年度秋学期のテーマは、「うごけよつねに」に決めた。英語は、「Stay Mobile and Carry On」をあてた。すでに述べたとおり、「モバイルでいること」が重要なのだ。身軽でいれば、(つぎの場所へ)すみやかに移動できる。物理的なモノだけではなく、きっとぼくたちの心理状態についても「モバイルでいること」に意味があるのだろう。

モノをとおしてコミュニケーションを考える

今回は、学部1〜3年生で5つのグループを編成して、このプロジェクトをすすめた。ぼくが、あらかじめベースとなる「車両」を準備し、それぞれのグループに提供した。キックボード、キャリーカート、電動アシスト付き自転車など、形もサイズも多様だ。いずれも車輪がついていて、そのままでも使えるので、いわばカスタムカー(改造車)をつくるようなものだ。

学生たちは、〈いつ・どこで・誰と・どのように過ごしたいのか〉という具体的な状況を考えながら、場づくりを容易にしたり、コミュニケーションを促したりする「モバイル・キット」のデザインに取り組んだ。そして、考案した「車両」は、かならず一度はまちに持ち出して、実践(フィールド・テスト)をおこなう。モノ自体は、多少粗削りでも、仕上げが雑でもかまわない。なにより、教室や研究室に留めておくのではなく、リアルな現場へと「車両」をころがして、実践をとおして考えることが大切なのだ。
 
こうした課題は、なかなか難しい。「車両」があたえられると、形や見栄えに意識が向いて、〈つくる〉ことが先行しがちになる。発想が制約されることにもなる。そうならないように、その「車両」によって、どのようなコミュニケーションが生まれるのかについて、つねに〈考える〉ように促した。〈つくる〉と〈考える〉は一体だ。
 
ぼくが、形にばかりこだわらず、日常生活のさまざまな場面を、コミュニケーションをとおして考えることを強調しすぎたのだろうか。いくつかのグループは、「車両」にほとんど手を加えることなく、渡したときとほぼ同じ状態のままでプロジェクトをすすめた。成果を待つ身としては、とても面白い展開になった。(加藤文俊)

2018年2月

 
「うごけよつねに」の成果は、2018年2月3日(土)〜5日(月)にかけて、「フィールドワーク展XIV いろんなみかた」(横浜市中区・BUKATSUDO)で展示しました。
 

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