的な桜丘

Tekina Sakuragaoka

3人で1枚

久慈 麻友・小島 信一郎・佐々木 茅乃  
[それいけ!サクラガオカ]

桜丘を知る
グループが結成された当初、三人とも春学期からの継続履修者ではあったが、どれだけ話し合っても三人が得意とする表現手法や三人「的な」を表す共通した要素は見当たらなかった。そこでまずは、フィールドである桜丘を知ることを目的として桜丘に赴き、二回のフィールドワークを行った。一回目のフィールドワークでは、桜丘を三人で歩き、それぞれが印象に残ったことを書き留めた。興味深かったのは、同じ道を一緒に歩いているのにもかかわらず、三人が着目した点はバラバラだったということだ。二回目のフィールドワークでは、複数のルールを定め、三人が別々に桜丘を歩いた。定めたルールは、過ごす時間は一時間、その間は何をしても自由、晴れた日に行くという三点だ。二回のフィールドワークを終えて、それぞれ印象に残ったことや行った場所などをマッピングし、照らし合わせた。
三人ともが共通して見ているものがほとんどなく、「それいけ!サクラガオカ的な」ものを発見することの難しさについて思い知らされることになる。計二回のフィールドワークで得られた発見は、私たちはそれぞれ違った視点で桜丘を見ていることと、私たちは桜丘の「歩いた」景色しか見ていないということだった。今振り返ってみると、「歩く」以外の動作によって桜丘というまちを捉えてみようとしたことが、「それいけ!サクラガオカ的」の発見に通じていたと考える。
 
「それいけ的な」をさがす
「歩く」という動作以外を行うことによって、私たちは「それいけ!サクラガオカ的な」を見出そうとした。それまでに行った二回のフィールドワークで、桜丘の坂の多さを感じていたことから、坂を利用した動作を行うことにした。まずは、桜丘にある坂の角度を測り、その角度を身体で体感してみようと坂に寝そべって「歩く」という方法以外を使って桜丘を眺めてみた。三人ともコンクリートに寝そべったことがほとんどなかったため、坂に寝っ転がる時はかなり抵抗を感じた。地面が綺麗なのかどうかを気にしたり、通行人にどのように見られているのかを考えたり、気にかかる点は尽きなかった。しかし、いざ勇気を出して地面に寝てみると、坂道に寝転がることが意外にも心地よく思えてきた。寝そべった姿勢から眺める空は晴れ渡っていて、何より全身を使って坂を感じることができた。次第に感じていた恥ずかしさや戸惑いはなくなった。坂に寝そべる以外にも、坂道を走るなどして、自分たちの身体を駆使して桜丘を捉えることを試みていた。
 
「接する」的な桜丘
坂に寝転がるなど、あらゆる動作を試したフィールドワークを終えて、私たちは「それいけ!サクラガオカ的な」について改めて考えてみた。「歩く」という動作以外によって桜丘を感じてみることを思いついたこと、三人でフィールドワークをしているとなぜか走ったり寝てみたり、動作や姿勢を変えて桜丘を感じようとしてしまうこと。このことから、寝転がるなどの地面と「接する」動作を通して桜丘を捉えることが「それいけ!サクラガオカ的な桜丘」なのではないか、と考えるようになった。
 

 
三人の共通点
私たちの「的な」を表すかもしれない『接する』的な桜丘を意識した上で、私たちは再度フィールドワークに出かけた。そのフィールドワークの内容は、とくに印象に残っている桜丘の10ヶ所で10個の動作をしてみるというものだ。手のひらで地面をさわる、ブリッジをする、逆立ちをするといった動作を行い、身体を思い切り動かしながら桜丘を肌で感じることを心がけた。これまで行ってきたフィールドワークと大きく異なるところは、できるだけ動きやすいようジャージで臨んだことである。服装を変えて桜丘に出向くだけで、桜丘との物理的な距離も縮むことを実感した。動作を行うと、手に擦り傷ができたり、膝に痛みを感じたりするなど、地面と身体が接したからこそ起こったことがいくつもあった。最初は道の端で動くことすら躊躇していたが、次第に慣れを感じてきた自分たちがいて、一つ一つの動作も大胆に行うようになっていった。さらに、最初に定めた十個の動作以外の技を互いに披露しているうちに、三人とも自分の身体を操ることが得意であることが分かってきた。お互いのバックグランドを紐解いてみると、一人は現在も體育會に所属する陸上選手、一人は器械体操経験者、一人はクラシックバレエ経験者であることを発見したのである。プロジェクトが始まった当初は三人に共通する「的な」を探すことに苦労していたが、このフィールドワークを経て「的な桜丘」のプロジェクトの方向性が見えた気がした。
 
それいけ!サクラガオカ「的な」フィールドワーク
身体を動かすことが得意という共通点を見つけた私たちは、身体能力を生かすことのできるフィールドワークに挑戦してみることにした。行ったフィールドワークでは、「私たちにしかできない発想で、その場所に合ったポーズを取る」ことを主軸にしている。フィールドワークの方法としては、桜丘を自由に歩き、自分たちの身体が反応したスポットでその場所に合ったポーズを取った。その際、お互いの気持ちや気がついたことを言葉にしながら、坂の角度や置いてあるモノなど場所の特徴を表現するポーズを考えた。歩く場所や写真を撮るスポットを決めずにフィールドワークを行ったため、その場所に対する身体の反応を直で表すことができたと考える。フィールドワークを行った時の服装は、色違いのパーカーとジーンズに決めた。動きやすくも通行人に紛れることもできるスタイルで、かつ統一感を出したかったからだ。撮影は三脚を使いつつ、研究会のメンバーにも手伝ってもらいながら、三人で一枚の写真をそれぞれのスポットで収めた。

それいけ!サクラガオカ 写真集

アウトプットについて
これまで行ってきた「接する的なフィールドワーク」を振り返ると、私たちは、一つのポーズが出来上がるまでの過程にも面白さが隠れているのではないかと分析した。この数ヶ月の成果となるアウトプットを考えたとき、桜丘で撮影した写真とともに、これまでのプロセスをまとめることが私たちの活動の集大成になるのではないかという結論に至った。
具体的なアウトプットとしては、これまで撮りためてきた三人で一枚のポーズ写真を写真集の形でまとめた。ポーズ写真の他にも、メイキング集としてフィールドワークの様子がわかる写真を掲載している。さらに、フィールドワークをしている様子を第三者である研究会のメンバーに収めてもらい、その様子をリアルに感じてもらえるビデオを作成した。私たちの「的な」を見つけるまでの過程を少しでも共有できれば幸いである。
 
『的な桜丘』は、2019年2月8日(金)〜10日(日)にかけて開催した「フィールドワーク展XV:ドリップ」(https://vanotica.net/fw1015/)で展示しました。