慶應義塾大学 加藤文俊研究室
フィールドワーク展 XVIII
ぐるりと
2022年3月11日(金)〜13日(日)
2022年2月4日(金)〜6日(日)
11:00〜19:00 [最終入場 18:00]
 

わたしたちは、自分自身や身の回り、さらに社会の様子の理解を深めるため、さまざまな場所や思考を巡ってきました。 その中で、昨年からわたしたちの生活は大きく変わり、 これまで築き上げられた「当たり前」が崩れていきました。

昨年度の「フィールドワーク展」も17回目にして初のオンライン開催となりました。 慣れない状況下で、 わたしたちの取り組みが何のためになるのか、目指すものは何なのか、 不明瞭なままさまようこともありました。
それでも、 過去を振り返る人、自分の世界を広げる人、 また、立ち止まってじっと自分を見つめる人。 それぞれ向かっている方向は違うけれど、わたしたちは着実に進んできました。 その進んできた道を見てみると、そこにはいろんなぐるりとした軌跡が残されていました。

わたしたちが描いてきたこれらの軌跡は、 さまざまな色や形をしていて、 ひとつとして同じものは存在せず、今という時間をうつしだしています。 そしてそれらが交わり合う場所が、「フィールドワーク展」です。
 
およそ2年間は離れて過ごす時間が続きましたが、今回は会場へと戻ってきます。 触れ合うことはまだむずかしいものの、目を向け合いながら対話をすることが再び可能になります。 それぞれの軌跡を辿りながら、みなさんも身の回りの人やもの、場所を「ぐるりと」見渡してみてください。 会場で、お待ちしています。


更新情報|Updates
  • 2022/3/9 - フロアマップを更新+展示紹介を更新しました。
  • 2022/3/3 - フロアマップを追加+展示紹介を更新しました。
  • 2022/2/26 - ウェブサイトを更新しました。
  • 2022/2/24 - 予約サイト(Peatix)をオープンしました。
  • 2022/1/29 - COVID-19の感染者数増加に鑑み、開催を3月に延期することになりました。あたらしい会期:3月11日(金)〜13日(日)
  • 2021/12/15 - 開場時間、会場へのマップ、ご挨拶を更新しました。
  • 2021/12/1 - ウェブサイトを公開しました。

ごあいさつ|Message

「ぐるりと」によせて
 
今年も「フィールドワーク展」の準備をする季節になった。まだまだ落ち着かないが、なんとか無事に日時も会場も決まった。 18回目の展覧会のタイトルは、「ぐるりと」である。
 
ここで「ぐるりと」描かれているのは、円環ではない。それは、内に向かってゆくのか、それとも外へと広がるのか。いずれにせよ、螺旋の軌跡だ。 だから、この2年近くにおよぶ窮屈な毎日を経て、「ぐるりと」元に戻るわけではない。これは、とても大切な点だ。 ふたたびかつての場所に帰るのだろうなどと思っていると、失意が待っているだけかもしれない。「ぐるりと」は、まだ見ぬ世界への誘いなのだ。
 
フィールドワークは、身体を駆使する活動だ。つまり、コミュニケーションに根ざした活動だ。 気づけば、いままで以上にオンラインのコミュニケーションが日常化していた。 お互いを知る手がかりが著しく制限され、平板なやりとりに終始しているようにさえ思える。たくさんのことばが、そぎ落とされている。 そんななかで、ぼくたちはどのように身体を使い、多様な関係性の表れをとらえようとしてきたのか。 「ぐるりと」会場を巡れば、フィールドワークの行方を想像できるはずだ。
 
加藤文俊
 


展示紹介|Contents

見えない学びの場:レモンさんちを担う人々

日下真緒
大阪府に、子どもたちが勉強するために集う場所「レモンさんち」がある。この研究では、多声的ビジュアルエスノグラフィーの手法で、「レモンさんち」を担う3人の運営者とともに1年以上かけて映像制作を行ない、彼らの意味世界を探索する。そしてなぜこの場所が生まれたのか、子どもたちにとってどのような存在として集われているのかについて理解する。
 

リフレクト:場づくりに関するコミュニケーションを促進するツールのデザイン

大門俊介
ある主宰者が運営している、コミュニティカフェや地域の居場所、子どもの遊び場など、日本全国13カ所の場へフィールドワーク調査を行ないました。そして、調査から明らかになった主宰者の語りや構成要素から、場の構想や主宰者の省察が進むワークショップを制作して実践を重ねていきました。ここでは、調査、制作、実践、考察と「ぐるりと」進んでいった研究の流れをご覧ください。
 

再帰的創造(Reflexive Creation):「わたしの物語」とファッションの概念を書き換える

龍花(小野瀬)慶子
人間にとってファッションとは何でしょうか。果たして経済的価値と消費でしょうか。他者へのメッセージでしょうか。「ファッションをつくる」実践者として経験した社会的世界を著述した「わたしの物語」を触媒に、対話者と協同を行い、振り返る実践を行ってきました。その過程で、感じ、気づき、変化し、見出したものを作品として展示します。見えてきたもう一つのファッションの姿を「わたし」と共に感じていただけたら幸いです。
 

Network building of international students in Japan

Kozimova Zilola
In spite of the restrictions caused by the COVID-19 pandemic, many people are still choosing to study abroad. Japan started to accept more international students in the last few decades thanks to the new policies to increase the number of international students. This means higher education establishments in Japan need to be able to cater for the needs of international students from various aspects. Research on international students shows that universities’ active promotion of international students integration into academic and social life creates more satisfactory study abroad experience. This research studies international students’ social network-building throughout their study abroad period in Japan, and its overall impact on their experience.
 

Communication Device

Panagiotidou Chrysoula
このプロジェクトは、非母語によるコミュニケーションにおいての、翻訳アプリの日常的な使用の実態調査を通して、人々と、の間に発生し得るインタラクションの様相の記述を目指します。
State-of-art technologies have increasingly guided and changed our everyday habits and behaviours, including interaction with others. This project explores the spread of Neural Machine Translation applications, a recent development in multilingual communication. Most studies begin with the premise that the automatic translation technology cannot, even when advanced, take into account the more nuanced aspects of language and human communication. However, the technology still finds its way into various areas of our life, especially online. This project aims to document how various Machine Translation applications serve the users in every day life and what role this technology plays for their reality.

時間割日記

中田早紀
世の中にはあらゆる時間割が存在し、そこには日常生活における一人ひとりの時間の使い方や考え方が表れているのではないかと私は考えました。自らの時間割とともに学生生活4年間を振り返っていくうちに、私は自身の効率化ばかりを図ろうとしてきた姿勢に出会い、そして反省しました。このプロジェクトでは、効率主義な私とそうさせている社会について考え、一度立ち止まり、自身と向き合うきっかけを届けるメディアを作りました。
 

まちの人びとのスケッチ

牧野渚
このプロジェクトは、日々の生活の中で、まちにいる人をスケッチする取り組みです。描こうとする対象を観察しながらペンを走らせて記録を続けてきました。そして、現場での体験を通して自分にとって心地よい記録方法を見つけました。スケッチをすることで、まわりの存在に改めて意識を向ける感覚や、記録をすることで生まれる気づきをぜひ体験してみてください。
 

Mosha to Sakusha to

堤飛鳥
人生で初めて友人の作品を模写した際、相手が「自分の描く癖やフェチを露わにされたようで恥ずかしいような嬉しいような。」という返事をくれました。その出来事が強く印象に残り、1年間で友人3名の協力のもと計27作品の模写を実践しました。「模写」に取り組む中で、作品に対して多義な解釈を生み出せたり、また作者の創作背景への想像が促進されたりする体験をしました。このような面白さをポストカードによって表現することに試みました。
 

+2℃

山田琴乃
断片的な情報ではなく、連続的な語り(ストーリーテリング)を通して、相手を理解する場をつくりたいという思いを起点に、2者間の関係性を「+2℃」にするティーバッグを作りました。「半年以上ぶりに会う人」や「下の名前で呼んだことがない人」といったお題に当たる相手をお茶に誘い、それを使ってどのような会話やつながりが生まれたのかを、自身のお茶会体験をもの語りながら、改めて考えていきます。
 

Vさん

安藤 あかね
顔も、本当の名前もわからない。会話の手段は、ほぼ声のみ。オンラインコーチングを通した関係性の変化は、想像以上に面白いものでした。「Vさん」とのやりとりが始まってから、およそ1年。これまで経験したことや感じたことを、思うがままに書き連ねました。読んでくださった方の言葉を、帯のかたちにして紹介します。あなたにとっての「Vさん」は、誰ですか。あなたは、誰にとっての「Vさん」になりたいですか。
 

tema hima

飯盛いずみ
とにかく効率よく生きたい 「効率主義」な私。 そんな私が、 1年間コミュニケーションに手間隙をかけてみたプロジェクトです。
現在は、ほんの数秒、ボタンひとつで、世界中どこにいてもほとんど時差なくコミュニケーションをとれるようになりました。それが当たり前となった今、あえて手間と時間のかかる「文通」「交換ノート」「vlog交換日記」の3つのコ ミュニケーションを生活に取り入れ、「手間隙をかけること」と向き合いました。
 

fuwariを営む夫婦のライフストーリー研究

入江桜子
あたたかい時期はかき氷、寒い時期はクレープを販売している、キッチンカー『fuwari』を経営する夫婦を追い、観察したプロジェクトです。移動販売だからこそ場所や天気によって売れ行きも客層も変わるため細かく記録していきました。そして、モノや空間に対してこだわりを持つアパレル出身の2人が語ることがなかった、キッチンカーの中にあるこだわりをもっていないモノたちについて着目し、分析していきました。
 

100円ショップを「読む」

2021年度秋学期12名の学部生がグループワークを行い、“100円ショップを「読む」”というテーマのもとでそれぞれの観点から自由にリサーチを行いました。およそ5か月におよぶ活動をふり返りながら、あらためてひとり一人が語った「12人の100円ショップ」を、タペストリーにまとめました。
https://vanotica.net/100yen/
 

 

かとう研の壁

「かとう研の壁」は、2021年度の活動をふり返るタイムラインです。研究会活動を構成する、学期ごとのグループワークや、全国のまちを巡る「キャンプ」をはじめとした、様々な活動の記録や成果物をまとめたものになっています。少しずつ外に向かっての活動を再開し、人びととの出会いを通じて、たくさんの言葉と思考を積み重ねたこの1年をふり返るとともに、これからの私たちが乗り越えてゆくための「壁」でもあります。
 

123の記録

123の記録は、春学期と秋学期に加藤研を続けて履修した学部生8名による123日間の継続記録です。2021年10月1日から2022年1月31日まで、各自が取り組む内容やペースを決めて生活記録を生成しました。これらの記録は、自分を律するためだけでなくCOVID-19で希薄になったコミュニケーションの機会を取り戻すためでもあります。
 

ポスターのポスター

加藤文俊研究室では、全国を巡りながら、「キャンプ」と呼ぶワークショップ型のフィールドワークをすすめてきました。まちに暮らす人びとの想いや生きざまに触れ、調査の成果物としてポスターをつくって還すという過程で、日常生活の豊かさ、複雑さと向き合うことになります。ポスターというメディアは、シンプルながらも、自分の姿をあらためて見つめなおすきっかけになり、私たちのコミュニケーションを促します。
 

人びとの〇〇線

COVID-19の影響を受けて、全国のまちをめぐる「キャンプ」の活動は再編成を迫られました。「観察者」としての距離を保ちながら、ペアに別れて沿線の各駅でスケッチを行い、「沿線(らしさ)」を描き出す試みを実施しました。2020年10月に池上線、2020年11月に世田谷線、2021年5月に多摩川線で行ったスケッチを全て展示します。
 

300moji(300文字作文)

2021年春学期から、ことばを紡ぐ練習として300mojiの活動が始まりました。正方形の原稿用紙に向き合ってことばを並べ、出来上がった文章は#300mojiのハッシュタグをつけてインスタグラムにアップします。今回の展示では、有志メンバーがお気に入りの原稿をまとめた選集などの「ちいさなメディア」を作成しました。加藤研メンバーのお気に入りの原稿をお楽しみください。
 

ジブン(ジ)テン

2009年に卒業したフジイハルカの卒業プロジェクトとして始まり、これまで何人もの加藤研の仲間に代々受け継がれてきた『ジブン(ジ)テン』。それが今回、松井七海の手に渡りました。『ジブン(ジ)テン』は、特定の個人にまつわることがらを集め、解説付きでまとめたものです。具体的には、自分自身が幼少期〜中学、高校時代にかけて影響の受けたものを11カテゴリーに分類し、それぞれに関連する記憶や体験を300〜400字程度のショートエッセイとして綴っています。完成した項目を50音順に並べることで、時系列に束縛されない個人史の制作を目指しました。
 


会場|Access

BUKATSUDO
横浜市西区みなとみらい2丁目2番1号 ランドマークプラザ 地下1階
みなとみらい線「みなとみらい」駅徒歩3分、JR市営地下鉄「桜木町」駅徒歩5分
https://bukatsu-do.jp/


ご予約|Reservation

事前予約のお願い
「フィールドワーク展 XVIII: ぐるりと」は感染拡大防止のため、ご来場のみなさんに事前予約をお願いしています。
 

予約サイト(Peatix) https://fw1018-gururito.peatix.com/

 
* 状況により、入館方法や内容を変更する場合があります。あらかじめご了承ください。