ちいさなメディア論
GOOD THINGS COME IN SMALL MEDIA

ながらケーション

金江 ゆりあ・木根 景人・西谷 唯香
[C.C]
  

私たちの求めていること

私たちは、「ちいさなメディア」と聞いて、コロナ禍にいる私たちが求めている機会を探るため悩みを話し合い、それを解決するためのメディアを作ることを目標にした。教授と密になりたい、もっとおしゃべりしたい、新しい友達が欲しい。三者三様の悩みに見えてそれぞれ共通している部分があることに気づいた。それはどれも人とのコミュニケーションを欲していることだ。私たち三人はコロナ禍によってたくさんのコミュニケーションが失われたと感じ、それを取り返すという共通認識があった。糸電話やパズルなどが浮かんできたが、既存の仕組みに囚われすぎていると感じたため、まずはちいさなメディアの根本的なことについて考えることにした。
 

そもそもメディアって何?

私たちが思うメディアは、共通の話題となって人と人との仲立ちをするコミュニケーションのきっかけとなるものだという結論に至った。そこで、これまで自分たちが他の人と何かしらを共有した思い出を振り返り、自分たちが作るメディアに求める中身を具体的にイメージしてみることにした。しかし、ここでの思い出とは自分とある程度仲が良い人との関係であるため、自分たちが当初思い浮かべていた新しい人との出会いを求めるメディアとは乖離していることに気づいた。自分たちが実現したいと考える何かと、ちいさなメディアを一致させるためにもう一度自分たちの求めていることについて考えてみた。すると、私たちは失われたコミュニケーションを取り返すことに執着しすぎていたが、「コロナ禍だからこそのコミュニケーション」もある、と新しい視点を見つけることができた。
ちいさなメディアを作る上でのテーマとして、既存のコミュニケーションを何かに代替するのではなく、コロナ禍だからこその新しいコミュニケーション方法を考えていく方向に決めた。テーマを設定した上で考えてみると、私たちは「おしゃべり」を求めていた。そしておしゃべりについて語っていくと、「楽しい」というキーワードに辿り着いた。楽しいものは何度でもやりたくなるという点から、私たちが作り出すメディアが人々に楽しいと思ってもらえることが理想であり、また私たちのメディアを使っておしゃべりをしたいと思うようなメディアを作りたいと少しずつ方向性が決まってきた。
 

Time & Action Sharing

メディアに具体性を持たせるために、まず私たち3人が楽しいと感じるものを実験として行ってみることにした。私たちはやはり人と「おしゃべり」をしているときに楽しいと感じるという結論に至った。次に、コロナ禍だからこそのコミュニケーションでかつ、おしゃべりが生まれるメディアを作り出すことを考えた。おしゃべりは何か同じことをしている中で生まれるものと結論付いた。そして、物理的距離を保ちつつも時間と行動の共有を楽しむという目的を持って「Time & Action Sharing」の実験を行った。この実験のルールとしては、毎回時間を決めて集まることと、必ずその日のお題を決めるという二点だ。私たち三人がそれぞれで企画を考え、三日間実験をし、それぞれについての振り返り、そしてこの実験全体を通して特徴と実験後の変化について考察した。
私たちはランニング、ハンズクラップ、そしてトレーニングとストレッチを行った。この実験の特徴としては、場所と時間に拘束されないこと、一人よりも質を高められること、話題が生まれやすいこと、そしてやっていて楽しいということだ。実験後の変化としては、ミーティング後の雑談の時間が増えたこと、雑談の内容がプライベートな話題になったこと等があげられる。
 

関わり方のバリエーション

この実験を元に私たちは同じ行動を取るというメディアのバリエーションを増やすことにした。同じ行動を取る際に、①カメラオン・マイクオン、②カメラオン・マイクオフ、③カメラオフ・マイクオン、④カメラオフ・マイクオフの四種類の実験と、時間を共有せずに行動だけ共有するもの、行動は共有せずに時間だけ共有するものに分けた六種類の実験を行った。
①では部屋の掃除と食事会を、②では課題を、③ではオンラインゲームを、そして④ではテレビ鑑賞とオンラインゲームを行った。行動のみの共有では、同じ映画をそれぞれ都合の良い時間に見た。時間のみを共有するものに関しては同じ場所に集まり、それぞれが好きなことをすることにした。この実験を通して以下の特徴が分かった。①の状況下では画面が気になる分メディアに対しての集中力はそこまでないが、それぞれが話し出すタイミングがわかるため、会話が生まれやすい。②の状況下では、無音により見られている意識がないためメディアに対する集中力は高く、マイクオフのためその時には会話しないが、あとでそのことについての話題が生まれるという時差ありのコミュニケーションが生まれる。③の時は、服装など自分の見た目において自由が最も高く人からの見られ方を気にする必要がないため、メインがメディアとなり、集中力が高い。メディアに集中した状態のため、コミュニケーションもかなり生まれやすい。④では、相手が自分と同じことを同じ時間にしているのかがわからないということと、要素が違うということからメディアとして用いるのには不向きなことがわかった。しかしこれも、後日この時の内容について会話が生まれる時差のあるコミュニケーションが生まれやすい。
時間を共有せずに行動のみ共有するものでは、好きな時間に決まったメディアを見る点から、強制してメディアを見ている感覚が少なく集中度が高くなる。そして時間を共有していないため時差ありコミュニケーションも生まれる。行動を共有せず、時間のみを共有したものでは、同じ場所に集まってそれぞれが違うことをするため、メディアに対する集中度は低くなるが、コミュニケーションは生まれやすく話しやすいという特徴がある。

 

ながらケーション

バリエーションを増やした実験をしてみて、私たちは、カメラオフマイクオンが一番「同じことをする」という私たちのメディアに対しての集中度が高く、またコミュニケーションも生まれやすいため、これに特化したちいさなメディアを作り出すことにした。そこで考えたのが、掲示板である。テーマを呼びかけ人を集め、私たちが行ったようなことを自分たち三人以外の人を集めて行うというものである。これでは匿名性も高く、オンラインで実施されるものなので気軽に参加しやすい。楽しいと感じ、気軽に参加できて仲を深めて欲しいという私たちの理想に適切なちいさなメディアであると思う。まずは私たちで掲示板を実施してみて、その後に研究会の人々に広げ、小さな繋がりを作る。