フィールドワーク展>卒業制作より


ポストカード片手に歩こう(浅野 哲朗)

街を歩く人に対して、〈目線〉の共有と〈目線〉の記録という2つの視点をもってもらいます。ここでケータイとポストカードのみで歩ける、新しい街の楽しみ方を提案します。

ウェブログの流行で、ケータイ写真で生活を綴る人が増えてきました。僕たちはそれを見ることで、その人の〈目線〉を共有しています。しかしケータイで街を切り取ることは、街をただの素材と化してしまいました。街には流れがあり、いま・ここが際立つことでホントに人の見たモノを感じることができます。

僕はそんな〈目線〉を1枚のカードにして持ち歩くことにしました。カードの写真と同じように歩くのも好し、ついでにお気に入りの場所に行くのも構いません。それはある人の一日かもしれないし、はたまたオススメの場所かも知れません。そして今度は自分で見たこと、感じたことを撮ることで、自分の〈目線〉を記録していきます。同じカードを片手に歩いたとしても、時間や興味が違うだけで様々な〈目線〉が撮られます。記録された写真はウェブログに送ることで、同じカードを手にした他の人の〈目線〉と一筋の流れとなって蓄積されます。

そこで〈目線〉を織り交ぜることで、また新しいカードが生まれます。新しいカードではどの〈目線〉が残されるのか、消えるのか。当然、同じ写真もあるかもしれません。ここでは僕たちの地域や文化への想い、そして手にした人たちを映しています。カードのコレクト性は、ウェブログでログとして残すことに似ています。そのものを拡げていくことは容易になります。


一緒におはなししよう(上野 愛)

卒業制作として絵本を出展します!、と言うと驚かれることが多々あります。

絵本を作ろうと思い立った理由は簡単でした。1番シンプルな形で想いを伝えられる手段だと感じたからです。

“ヒトに何かを教えてあげる”ということ。一見すると、なんの問題のないコトバに聞こえます。しかしながら、”教えてあげる”という考え方が、誰かを傷つけてしまうことだってあるのかもしれません。

ヒトは、自信のない行動には最善の注意を払います。しかし、自分の自信のある行動、よかれと思っている行動には、つい目を向けなくなっているのではないでしょうか。この絵本の核となるテーマは、まさにここにあります。

私が2年間続けてきた活動。その中で出会った様々な人の影響や、その人たちとのやり取り、そして自分の感情の変化がこの絵本の中に盛り込まれています。

是非、皆様にご覧頂けたら幸いです。


バノチカマニアな私(大野 亜紗子)

  • 教員 1名 + 院生 5名 + 学部生 19名 = バノチカ 25名
  • バノチカ 170日= メール 372通 = 携帯カメラ写真 2556枚*
  • バノチカ 25名 × 授業 16回 = 着席 460回**

この半年間、私はバノチカを対象としたコミュニティ研究を行ってきた。桜木町でのフィールドワーク、授業中、メール、ありとあらゆる場面を記録・観察してきたのである。

気づけばちょっとしたバノチカマニアと化していた。

バノチカの一員(参加者)でありながらも同時にオブザーバー(観察者)である私。時には自分の立場がよくわからなくて混乱をしたり、一緒にいる仲間たちを“調査”している事に罪悪感を感じたりもした。

だけどちょっと気味が悪いかもしれないが、みんなが私の事をよく知らなくても、私はみんなの事をずっと見てきたし、一人一人が本当に大切に思える。言うならば、マニアでありそしてファンなのかもしれない。執筆している卒業論文ではメンバーの名前を仮名にして伏せているが、フィールドワーク展では実名でのメンバー紹介を予定している。バノチカマニアの私から見た、メンバー自身も知らない自分発見がある事を願っている。

半年間のみんなの協力への感謝の気持ちを、作品に変えられればと思う。

* 2004年8月1日(メーリングリスト作成日)〜2005年1月17日(最終授業日)の間
** 実際には欠席者がいたため若干数字は異なる


宣伝。(川崎 玄義)

こんにちは、ネコミ大学(Network Communication University)の事務長です。ネコミ大学とは、ウェブやメールを用いて直接顔を合わせることなく、ネットワーク上だけでコミュニケーションをとる、ウェブ上の仮想大学です。学生には3ヶ月間、ハンドルネームを用いて(実際の年齢・性別などを伏せて)寮生活を送ってもらう過程で、ネットワークコミュニケーションについて考えてもらいます。

今回は、そのネコミ大学第一期生が卒業を迎えたこともあり、“ネコミ大学総括”の本を私が執筆する折となりましたので、その宣伝に参りました。卒業生のみなさんも、今後当大学の受験を考えておられる方も、ご一読いただけたら幸いです。

ネコミ大学 事務長

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この事務長とは、僕のことです。

ネコミ大学は、「ネットワークコミュニケーション」という大学授業の一環で実験的に行われたゲームです。僕はその大学で“事務長”として運営に携わり、3ヶ月間“学生”のコミュニケーション環境を作ってきました。

端から見たら、ただのゲームにしか見えないかもしれません。それでも、このゲームに熱くなり、真剣になり、議論する人々がいます。彼らは何故こうもネコミ大学にはまったのか。この本を読んだら、それが少しはわかるかもしれません――。


楽しい「グループワーク」をしよう!(笹岡 千代)

私はこの大学4年間、どうやったら「グループワーク」が上手くいくのか、ということを考えてきた。「グループワーク」の醍醐味は、一人じゃ出来ないことができること。相互作用、協力、共有、コラボレーションといったもの。それを最大限に引き出すことが、「グループワーク」をしている意味なのではないだろうか。人によって、能力も性格も向き不向きも違う。だから、「グループワーク」はおもしろいし、時には問題が起きてしまう。

それを解決するには、個人個人が個人個人とそのグループに対して「思いやり」をきちんと持てばいい。それには、そのグループ自体に対する愛着や一体感を持てばいいのではないか。この考えを元に、私は2つのゲーミングシュミレーションを考案した。

1つ目は、自分だけではなく各メンバーのことを思いやることを目的としたゲーム。

2つ目は、その応用編として、実際にグループで協力やコラボレーションを行ない自分のグループ内での振る舞いや心構えについて振り返るきっかけを与えるゲームである。

今回は6日(日)の午後にワークショップとして実際にゲームの実演をさせてもらうことになった。興味のある方は是非、一緒に楽しい「グループワーク」をしてみませんか?


学習ゲーム - Communication × Our Life(室井 瑛理子)

" One cannot not communicate. " − コミュニケーションせずにはいられない。

このコトバに出会ったのは、大学1年の秋に受けた講義の中であった。それを機に私は、コミュニケーションそのものに関心を持ち、考えるようになった。

話す。聞く。視線を交わす。会釈をする。どんな行動も何らかの意味を持つコミュニケーションだと考えることが出来る。時には無言で俯き目を合わさずにいることでさえも。そう、人はコミュニケーションなしに生きられない。無意識のうちに、私たちは環境(ヒト・モノ、自分を取り囲むありとあらゆるもの)とコミュニケーションをしている。

ゲーミングという方法は、日常のメタファーとしての役割を持つ。実体験ではないものの、構造的に提供される類似状況を体験することにより、様々な日常の場面を想起(追体験)させることが可能である。その際それを、ゲームを通じて得られた感覚と照らし合わせることで、その状況の客観視が可能となり、ゲーム上での経験を日常へと還元することができるだろう。

そういったゲーミングの効用を利用し、コミュニケーションそのものについて考える機会を創出したい。今回の学習ゲームでは、以下の2点にポイントを置いた。

  • コトバの表現
  • 信頼というもの

「コミュニケーションなしには生きられない。」

当たりまえのものを当たりまえとせず、一度立ち止まって振り返るなかで得られる気づきが、私たちのよりよいコミュニケーション、そして他者との関係性へのヒントとなればと願う。


フィールドワーク展>卒業制作より・〈場〉のチカラ プロジェクト・慶応大学環境情報学部 加藤文俊研究室