チャラ

Go Well Together

原動力のチャラ

飯盛 いずみ・堤 飛鳥・山田 琴乃

[ALONE AT HOUSE]

 

チャラだと感じるエピソードを集める

まずはそれぞれがチャラだと感じるエピソードを集めることから始めた。そのエピソードをテーマごとに分け、チャラと感じるかどうかを話し合った。同じテーマであっても、人によってチャラと感じるかどうか違いがあったことから、個人で再度エピソードの整理を行った。そこでは、より具体的にエピソードを記述し、どこの場面で、どのような関係性においてチャラと感じるのか/感じないのかということに着目した。しかし、チャラとは関係性の話であり、ある一つのキーワードに当てはめて考えるということの難しさに突き当たった。そこで、一旦「チャラ」をそのまま扱おうとせず、私たちの関係性の中でチャラがどのように働くのかをフィールドワークを通して考えることにした。
三人で共通して、何かを続けることに苦手意識を持っていた。続ける中で効果を感じられないことは、モチベーションの低下や不安に繋がる。ましてや、その変化というのはふとした瞬間や、自分以外の誰かによって気づかされる。そこで、私たちは日常的にチャラを求めているのではないかという仮説をたて、続けることが苦手な三人がお互いに支えあいながら何かを習慣づけることを目指すことにした。題して、「チャラは力なり」プロジェクトである。
 

「チャラは力なり」プロジェクト始動

食事、運動、睡眠の三項目について、習慣化させたいことを軸にそれぞれが目標を立てた。書き方やルール自体のシビアさも個々の基準で決めた。自由ながらも、共通して「健康的な生活を目指す」という目標をたてることで、一体感を高めた。以下、プロジェクトの具体的なルールである。
 

  • 睡眠時間、食事と運動内容、総合評価といった項目を毎日リアルタイムで更新する。
  • 間食で食べてしまった物、我慢できた物を載せる。
  • 起床就寝時間、達成度を一日の終わりに記入する。

 
食事は基本的に写真とテキストで記録し、その他はテキストのみで時間や内容を記録した。また、並行して毎日日記をつけ、その日の出来事やメンタル、考えていることなどを自由に記録した。そしてそれに対して二人がコメントし、運動・食事・睡眠などフィジカルな助け合いだけでなくアドバイスや励ましなどメンタルのサポートも三人で行った。活動当初は頑張ったことの報告が多かったが、日が進むにつれそれぞれの価値観や悩み相談などが増え、この活動を通した三人の関係性の変化や、それとチャラとの関係性についてなどを考えるきっかけにもなった。この活動は六月の一ヶ月間行い、記録は主にスクラップボックスを用いた。
この活動の中でまず感じたことは、記録がリアルタイムで更新されることの重要性だ。それぞれの生活がリアルタイムで共有されることで、自分の生活が見られているという意識が芽生え、行動する動機付けとなっていた。また、お互いの存在が感じられることで、今まで以上にストイックになることもあった。活動の序盤では、記録することや、三人で取り組んでいるからこその責任からか、意識的に行動した。二週間も経過すると、記録することがあたりまえになり、運動の内容を工夫し始めるなどの変化が見られた。また、この活動はそれぞれが自分の生活や意識を見直すきっかけとなった。どのようなときに自分が頑張る/サボる傾向にあるのかや、なぜ自分が当初の目標を立てたのかを考える、自己分析の一ヶ月でもあった。

共有するということ

この記録は三人以外の人にも閲覧できるように公開していた。また三人で毎週、ふり返りの動画を撮るなど、記録を共有するということを大切にした。これを見た同じ研究会のメンバーや友人などからコメントやアドバイスをもらうこともあった。それによって、私たちの頑張る原動力が増え、さらに生活を見直し、修正するきっかけにつながった。このことは、記録を共有した段階では予想していなかったことであった。同じ研究会の先輩から頂いたコメントに印象的なものがあったので紹介する。
「美しい〝結果〟だけではなく、リアルな〝経過〟も見れる記録を通して〝追体験〟をすごく感じる。」
ここから、三人という小さな枠の外との関係性の変化についても考えるようになった。今回の活動はただの大学生の生活の記録だが、それを共有したことによって見ている人により親近感を抱いてもらい、発信した記録以上のフィードバックや力を周りから受け取ることができた。また、この活動によって私もやってみようなど、誰かの何かのきっかけを知らぬ間に作っていたことに気づいた。そしてこれがまたさらに次の人や関係性に継がれていったり、それがまた私たちの頑張る原動力になって返ってきたりと、頑張る〈原動力〉が結果としてネットワークのように大きな連鎖となって、私たちの見えないところにまで広がり続けているのではないかと考えた。
 

チャラとは〈原動力〉だ

当初、私たちは「チャラ」に対して損益を気にするような関係性というように、ネガティブなイメージを抱えていた。しかしこのプロジェクトを通して、私たちはチャラのポジティブな面に目を向けるようになった。活動の中で、バイトの研修や誕生日でお菓子を食べることがあった。それに対して活動以前の私たちであれば、バイトだし仕方ないと割り切り、食べた分運動すればいいという考えをしていた。しかし活動の中では、仕方ないと割り切りたくない、食べた分運動を頑張ろうと考えるようになった。同じ食べた分運動するという行為であったとしても、食べた分チャラにしようと運動するのと、食べた分"頑張って"運動しようということは全く別物だった。つまり、マイナスからゼロに向かうのではなく、マイナスからプラスに向かおうとする意識の変化があったのだ。チャラが〈原動力〉となり何か行動を起こすことによって、目的以上の達成感や満足感を得ることができた。またそうして起こした行動によって広がったり深まったりする関係性の存在にも気がついた。
私たちは日常的、潜在的に「チャラ」の恩恵を受けている。チャラにするという言葉で関係性を簡単に済ましてしまうのはよくないが、積極的に取り入れていくことは案外いいのかもしれない。
 
◎活動のようす → https://aloneathouse.tumblr.com/
 

さいごに

今回のプロジェクトの様子を、動画とホームページでまとめた。動画は、日々の記録の中で、各曜日ごとに朝ごはんや運動などテーマを決めその様子を撮っていたものをまとめものだ。ホームページは、私たちがスクラップボックスで記録していたものを見やすいようにまとめたものである。食事や運動の様子などを、日付単位やそれぞれ個人単位で見ることができるようになっている。私たちの成果を見るもよし、この記録と一緒に何か一ヶ月続けるもよし。その時はぜひ記録して、あなたの周りの誰かに共有してほしい。