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伊東 柚香・中島 羽那・西尾 有紗
発見!湘南台アートスクエア
湘南台アートスクエア。名前は聞き馴染みがないかもしれないが、湘南台駅を利用したことがある人なら大方分かるだろう。ブルーラインの改札の向かいにある、木目調の床のちょっとした広場のことだ。
最初はスクエア内の赤い壁画にもたれかかる、イケイケダンサー集団が気になったのがきっかけである。そしてそれに対しての行政の抵抗なのであろう、「壁画の鑑賞はここからしましょう 湘南台市民センター」と記載された奇妙な張り紙。独特の雰囲気を放つホームレスの存在。私たちが最も使用しているはずの湘南台駅。しかし駅構内のこの場所には馴染みのないものに溢れていた。研究会の後に毎週アートスクエアを観察し、記録してみて、様々な登場人物がいることに気が付いた。みんなそれぞれテリトリーを持っていて、自由に過ごしている。
スクエア内で過ごす方々の人間観察にどんどんのめり込んでいき、湘南台近くに住む加藤研メンバーにも協力してもらいながら記述を進めていくうちに、自分たちもテリトリーを持ち、アートスクエアに馴染みたいと思うようになった。スクエア内でご飯を食べて、ファゴットを演奏して、他のテリトリーを侵食したり、この場所に順応したり様々な実践を試みていった。アートスクエアの自由度の高さに驚き、それと同時にどの程度自由にこの場所を利用して良いのだろうか、というルールの所在が気になり出した。
自然発生的な秩序
アートスクエアは、公式には「飲酒・火気・球技・スケートボードの使用禁止」「営利目的の使用禁止」といった最低限のルールがあるだけで、比較的自由な空間である。
アートスクエアには柱が複数あって、皆それに沿って自分たちのテリトリーを形成しその中で活動していた。言葉にせずともお互いに見えない境界線を越えないよう、距離感を保ちながら共存しているように見えた。
この秩序に対して私たちが「抵抗」してみるとどうだろうか。そこで、私たちは明文化された禁止事項を守ることを前提に、周囲への溶け込みから徐々に逸脱した行為を試すことにした。最初はアートスクエアの中に入り、柱のそばに座ってただ観察することから始めた。そして次第に人数を増やして自分たちのテリトリーを広げたり、あるいはみんなでご飯を食べてみたりもした。湘南台の西口にある王将でそれぞれ餃子をテイクアウトし、アートスクエアの中で地べたに座ってピクニックのように食事会を行った。
またある日は楽器を吹き鳴らしてみたりもした。音楽は相鉄線のホームまで届くほどの音量だった。だが、私たちの活動に対して何か苦言を呈する人はいなかった。ただ少し通行人からの目が気になったものの、周囲の利用者らは私たちに干渉せず今まで通り各々活動を行っていた。
観察の回数を重ねるごとに、アートスクエアの利用者に見覚えのある人が増えていった。彼らの多くはいつも決まった場所に居て、たとえば中央の柱付近では、タコのように踊る男性やブレイクダンサーたちがグータッチを交わしながら、年齢や属性の異なる人々が緩やかなコミュニティを築いていた。
つづきを読む『ささやかな抵抗』冊子版(PDF)→ sasayaka.pdf