バームクーヘン

加藤 夏奈・染谷 めい・ Nuey Pitcha Suphantarida
[かもなキッチン]

挟むことからメタファーで表現する

余白は一種の状態であり、移り変わりやすく人によって見方が異なる。時間的・空間的・心理的など様々な側面を含めて包括的に考えることが必要である。私たちは余白を理解する切り口にメタファーを用いることにした。状態としての余白の複雑さを残しつつ、わかりやすく余白の意味を表現することを目指したのだ。最終的に「バームクーヘン」というメタファーにたどり着いたが、そこに至るまでに「サンド」「チーズ」「ミルフィーユ」のメタファーが生まれた。「バームクーヘン」に至るまでのプロセスと、それぞれのメタファーについて説明をしていく。
余白とは「何かと何かの間に存在しどちらにも属さないもの」であり、余白自体はその場では気がつかず、振り返ることでそれが余白だったと気がつくことが多い。前者の要素を「サンド(余白はパンによって挟まれている)」、後者の要素を「チーズ(熟成中に気がつくとチーズに穴が開いている)」と定義した。より大きなスケールで見ると、「サンド」の挟むパン自体が、具と空気に挟まれる状態になる、つまり具だけが余白ではなく、挟むパン自体も余白になりうると考え、無限サンド=「ミルフィーユ」が生まれた。ミルフィーユのメタファーは、サンドの要素と、切り取り方によって見える余白が異なるという要素を含んでいる。これにさらに時間軸を加えることで、余白を理解するための3大要素である「間にある」「振り返ることで気がつく」「見え方が違う」を含んだ「バームクーヘン」というメタファーにたどり着いた。
バームクーヘンの層の違いは時間と立場の違いを表す。生地を一枚一枚重ねて焼いていくため、一層一層の出来上がる時間が異なり、内から外へと時間軸が置かれる。また、焼き加減は完全に均一化することはできないため、一層一層が異なるものになる。バームクーヘンの層を移動することは、余白を気づくプロセスを表す。例えば自分の余白と誰かの余白を観察したいとする。ある一つの層にいると、自分と観察対象の余白を気づきにくい。自分の余白はふりかえることで気づき、誰かの余白は異なる立場から観察することが必要であるため、同じ時間帯や同じ立場にいては、余白に気づきにくいのである。そこで、一歩外側の層に出る。そうすると、時間軸がずれることで客観的にふりかえる自分の余白を気づきやすくなり、異なる立場に立つことで観察対象の余白にも気づきやすくなる。
(つづく)

バームクーヘンのくに(2019)

つづきはブックレット『余白の理由』で。ブックレットは、2020年2月7日(金)〜9日(日)「フィールドワーク展XVI」(恵比寿・弘重ギャラリー)にて配布予定です。PDF版はこちら → https://vanotica.net/yohaku/yohaku.pdf

 
 
 

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