ぐるり調べ ::: 慶應

慶應

地図に映したかったもの

keio.jpg「慶應ぐるり 2010」相原瑛里・小林みずほ・新飼麻友・水谷晃毅今和次郎の三田の地図に出会って、それをよく覗き込んだところから、私たちの「ぐるり調べ」は始まった。昔の三田はどんなまちだったのだろう? そんな純粋な疑問をもって見た地図は、初めは「稽古場が複数あったこと」「多種の医療施設があったこと」などの印象を単純に返してきた。わたしたちは現代の地図と今和次郎の地図を持って三田のまちに繰り出した。そして半径500メートルを歩くうち、その苦労や地図に隠されたことにひとつずつぶつかってきたように思う。

直径1キロメートルの「ぐるり」は、思っていたよりも広いという印象だ。ただ単に一キロを歩くのとは大違いで、その中をひとつずつ見ながらくまなく歩き回るのだ。どんな店なのか、誰が通るのか、など様々な要素を感じながら記録を取った。そうして一通りすべてを歩き終えて現代版の地図を作ろうとしたときに、今和次郎が地図を描く様子が見えるような気がした。昔の「ぐるり地図」の空白は何もない空き地だったわけではないし、飲食店が存在しないのも本当に一軒もなかったわけではない。気づいてしまえば当然のように思えることも、実際に足を運び、手を動かして初めて実感として迫ってきた。今和次郎はなにをこの地図に映したのだろうか。そこに潜む調査者の意図を感じると、「ぐるり地図」は全く違うものに見えてきた。

では、わたしたちは何を残そう? たとえば百年後に私たちの地図を見る人に、三田というまちをどう見せたいのか。改めて、円で囲まれた範囲と向き合う日々がはじまった。

フィールドワーク展VIILinkIcon

さらにくわしい調査結果や写真は、2011年2月4日(金)〜6日(日)に開催される「フィールドワーク展VII」(ギャラリー やさしい予感)でご覧ください。成果をまとめた冊子、『早稲田・慶應・東大 ぐるり調べ』(A5変型・16ページ)は、会場で配布しています。