ぐるり調べ ::: はじめに

「ぐるり調べ」のこと。

顕微鏡の目線

gururi.jpg成果をまとめた冊子、『早稲田・慶應・東大 ぐるり調べ』(A5変型・16ページ)は、会場で配布しています。「考現学」で知られる今和次郎(こん・わじろう)は、さまざまな方法で「いま」の記録を試みた。なかでも、ぼくたちが注目しているのは「ぐるり調べ」だ。それは、まちの一角をぐるりと円で囲んで、そのなかをくまなく歩く、悉皆調査のやり方だ。成果は、顕微鏡を覗いたときのように、丸で囲まれた地図で現され、見ているだけで愉しい。
もちろん、愉しいだけではない。やはり、方法の探究なのだ。半径500メートル。直径1キロメートルというのは、歩き回るのにはちょうどいい。思っているよりも広いが、何度も出かけて、まちに親しみをもつためのサイズだ。おそらく、(いまでは事情がことなるかもしれないが)小学校の学区はこのくらいの広さだろう。

ぐるりと囲むやり方は、「個性研究」に適しているという。実際に直径1キロメートルを意識しながらまちを歩くと、この方法が有効であることがよくわかる。縁取りのおかげで、ぼくたちはその圏内に集中することができる。そして、1キロメートルというサイズが、おのずと個性へと目を向けさせるのだ。たとえば商店街を歩くとき、「ぐるり調べ」の方法だと、たんなる「天ぷら屋」では済まなくなる。その理解では粗すぎることに気づくからだ。ごく自然に、屋号と店主の顔と天丼の値段くらいは知っておこうという気になる。
そうやって、1キロ圏内を歩いていると、まちの個性がわかってくる。個別具体の世界だ。続けて足をはこんでいるうちに、愛着も湧く。この方法を使うと、まちや人びとの暮らしが、とても近くなる。

2010年の秋学期は、この「ぐるり調べ」という、まちの「個性研究」の方法について考えてみることにした。

フィールドワーク展VIILinkIcon

さらにくわしい調査結果や写真は、2011年2月4日(金)〜6日(日)に開催される「フィールドワーク展VII」(ギャラリー やさしい予感)でご覧ください。

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