MaTTello

いまぬま

中原 慎弥・Nuey Pitcha Suphantarida・望月 郁子・保浦 眞莉子

 

最近感じた小さな幸せはなにかと問われたら、あなたはすぐに答えることができるだろうか。日々の生活を送るなかで、積み重なる「やるべきこと」に追われ、意識的に余裕がある時間を作らなければ、とむしろ焦ってしまう。そんな風に、忙しさと余裕のなさに心が追いつかなくなってしまうことはないだろうか。


グループワークを始めたころ、私たちは「究極のひととき」について考えていた。美味しい朝ごはんを食べるとき、誰かと温かいコーヒーを飲むとき、何かが終わってほっとするとき。私たちが「究極の時間」について出てきた案は、どれも特別なものではなく、日常のなかにそっとひそんでいるような幸せの瞬間だった。そんなことを考えていたころ、グループのメンバーの一人である郁子が、最近見たある映画について話した。それは『パターソン』という映画だ。この映画は、バス運転手である主人公のパターソンの何気ない1週間の生活が丁寧に描かれた作品である。パターソンは、毎日同じ時間に起きて日々の業務を黙々とこなし、愛する妻の待つ家に帰って、夜には犬の散歩やバーに行く。同じように見える毎日が、実はこんなにも変化と幸せに溢れた日常であるのかということを、じんわりと感じられる映画だった。バスの運転席から見える見慣れた風景も、一緒に暮らす妻の表情も息遣いも、犬を連れて歩くその時間も、毎日同じようでいて、全く違う。
あまりに丁寧に描かれた日常から、日々の幸せを「感じとれること」の尊さに気づかされた。そこから私たちは、すでに日常に溢れているはずの幸せに「気がつく」ことができるようになるということを、グループワークを通したゴールにしたいと考えた。
 
つづきを読む → 『うごけよつねに』(PDF版