お爺車(おじいしゃん)

おたまじゃくし

柿嶋 夏海・田島 里桃・松室 雄大

 


本来、普通に暮らしているだけでは出会うことがない人たちと、出会って話すことができたらどんなに素敵だろう。私たちにとっての究極のひとときとは、「交わらない世代」との交流ができる時だ。交わらない世代とは、日常的に関わることのない90歳前後の方のことである。その世代は戦前に成人し、エネルギー消費量が今の半分であった1960年には既に30代を迎えている人たちだ。20歳の私たちの両親は50代、祖父母は70代後半から80代前半であることが多い。そのため、普段の生活で90代の方の話を聞く機会は極めて少ない。そんな交わらない世代の方の中でも、私たちはおじいちゃんに注目をした。
 
世間におばあちゃんの知恵袋が広まっている一方で、おじいちゃんの話をなかなか耳にはしない。私たちが聞ける機会のある話といえば、よく語られることの多い作られた綺麗な話や戦争体験ばかりだ。もちろん、その話を聞けることはとても貴重だ。しかし、私たちが知りたかったのは、おじいちゃんの口から出る「ふつうの暮らしや・まち・ひと」についてだった。男性の平均寿命が81歳の日本で、90歳前後のおじいちゃんに会うこと自体難しい。それでも90歳前後のおじいちゃんがいる限り私たちは直接会って話したい。おじいちゃんたちはひとりひとりが歩く図書館のように、これまで生きてきた90年分の知や経験を持っている。おじいちゃんたちにとっての「あたりまえ」を知るべく、私たちはおじいちゃんを探し続けた。
 
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