交わらない場所:一線を越えて

一線を越えて

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池袋、乙女ロード。

僕たちが初めて足を踏み入れた時、そこは、「僕たちと腐女子」の交わらない場所であった。
しかし、フィールドワークを重ねるうちに、男性客も見受けられ、何より自分たち自身に、ある程度の慣れが生じることで、
ボーダーレス化が進んでいると感じられた。
その一方で、それまで見えてこなかった、新たな境界線が見えてきた。
まず、新参者の腐女子と、通いなれた腐女子の間に存在するボーダーラインである。
一階はコンビニ、二階は同人誌専門店、地下は執事喫茶という建物がある。彼女たちの行動や服装を見ていると、
執事喫茶を訪れる人のほとんどは、乙女ロード自体が初めてである上、ここだけを目的に、同人誌の専門店などには立ち寄らない。
その人たちは、腐女子の世界に興味はあるのかもしれないが、未だ深く足を踏み入れていないように思われる。
少し離れた場所には、スーツを着た大人の男性常連客が多いメイドカフェを発見した。そこは秋葉原のメイドカフェのイメージとは異なり、
落ち着きのあるクラシックな趣を漂わせる。いわゆるオタクとも、乙女ロードとも馴染まない人が集う、交わらない場所であった。
またその数メートル離れたところに男装喫茶がある。僕たちが最後まで、見えないボーダーラインを強烈に感じた場所である。
そもそも来客が少なく、今まで観察してきた「腐女子」のイメージを必ずしも持ち合わせていない、「未知」であることが要因なのだろう。
通い詰めることで、薄れるボーダーと新たなボーダーが見えてくる、交わらない場所であった。

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