交わらない場所:おかえり

おかえり

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空港は「交わらざるを得ない場所」。

飛行機に乗るためには必ず誰もが空港を通過しなければならない。
109がギャルの場所で、秋葉原がオタクの場所ならば、空港は「飛行機に乗る」という目的のもと、 自分と似ていない人と交わらざるを得ない場所である。 私たちは「交わらざるを得ない場所」にも関わらず決して交わることのない何かを探すために、羽田空港に向かった。
私たちは到着ロビーに絞って観察を始めた。 空港においてゲートは搭乗券を持った人と持っていない人を明確に分けるボーダーラインである。 搭乗者が飛行機を降りてゲートを通過することは目に見える到着の形であるが、到着したという感覚は人によって違うはずだ。 飛行機が着陸した瞬間、携帯電話の電源を入れた瞬間...様々な瞬間で到着を実感する。

到着した人たちを観察していると、自然と目に入ってくるのが迎えの人たちだった。 飛行機の便名と到着時刻を何度も確認する父親。走ってゲートを出てきた息子を抱きとめ、 妻の大きな荷物を受け取る「おかえり」の瞬間があった。 いくつもの「おかえり」が生まれる到着ロビーで、颯爽とエスカレーターを降りていくサラリーマンもいた。 きっと、あのサラリーマンは家で家族が待ってくれているのだろう。 空港という交わらざるを得ない場所の交わらないもの。それは「おかえり」の瞬間だ。

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