ホーム | 作品から「共食」を見る

大森 彩加・木根 景人・小泉 大

 

3つのメディアを通して「共食」に近づく

「食事」というものは私たちが初めて行う社会的行為であり、大人になってもなお、生きる上で欠かすことのできない行為である。そして、食事は必ずしもただ単純に、機械的に行われるわけではない。仲良くなるために使われる手段や、家族の絆を確かめる方法になるなど、人と人との関係性を円滑にする役割を担う場合もある。それは現実世界に留まらず、さまざまな作品にも反映されている。アニメ、漫画、ドラマなどメディアを問わず、どの作品にも必ずといっても良いほど食事シーンが描かれている。
私たちは筆者や読者、はたまた社会全体の食に対する認識というものが作品に描かれる食事関連のシーンから見えてくると考えた。そのため、分析対象としてはそれぞれのグループメンバーが日常的に親しんでいる、もしくは関心を持っている漫画、映画、絵本の3種類を選択した。そしてメディアごとに食に関するシーンを収集し、それぞれの媒体間での特徴や相違点について観察・記録することにした。

「スクラップブック」と「共食チェックシート」

私たちは作品を収集するために100円ショップに売っているクラフトノートを購入し、「スクラップブック」と名付けた。これは、印象的であった食事シーンの写真を貼ったり、登場人物の属性、作者の食のイメージが分かりそうな情景やセリフを書き込んだり、発見があったことを貯蓄していくノートである。スクラップブックには作品を収集する際に、手元に残る形にしたい、みんなで見せ合える形にしたいという想いが込められており、交換することでグループ内外でのコミュニケーションが生まれることを期待した。実際に、スクラップブックの見せ合いはグループ内に留まらずグループ外の人にも広がり、おすすめの作品を教えてもらうといった交流が生まれた。このスクラップブックを3人それぞれが所有、随時更新することに加え、1週間に1度程3人でノートを交換し、その人が収集した作品や食のイメージに対する自分の経験や考えを付箋に書いて貼るようにした。漫画担当の大森は40冊、ドラマ・映画担当の木根はドラマ3本、映画、絵本担当の小泉は12冊分をスクラップブックに記録した。
さらに、メディア間での違いを明らかにするためには共通の「ものさし」が必要であると気づいたため、それぞれが見るべきチェック項目が書かれた「共食チェックシート」を作成した。食事が行われた状況を詳しく知るために、①何を食べていたか②洋食か和食か③何人で食べていたか④誰と食べていたか⑤屋外か屋内か⑥どこで食べているか⑦どのような話をしているか⑧食事シーンのコマ数・分数⑨食事の時間帯の計9つを具体的なチェック項目とした。
 
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