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小田 文太郎・芝辻 匠

 

この時代に、なぜ煙草か

初めに、私たちが食と煙草を関連させて考えようと思ったのは、なにより私たち2人が煙草を愛しているという理由からである。1日に10本と少々の煙草を嗜む私たちに共通する意見は、食後の喫煙の旨さは格別であるということだ。現代の社会では、喫煙に関する法律や条例がますます厳格化し、それに伴って喫煙者への風当たりも強くなっていることを実感している。確かに、身体の健康という観点から考えたとき、煙草は私たちにとって必ずしも良いものであるとは言えない。一方で、煙草はそれだけで悪いものになってしまうのだろうか。そう考えたとき、私たちは首を横に振る。一般的な意見に対峙するために、煙草とは一体どのようなものなのかということを見つめ直し、私たちが思う煙草の良さを整理したい。そして、私たちは胸を張って煙草が好きだと言いたい。留意していただきたいのは、この私たちの活動とそのまとめは、喫煙を推奨する目的を持ったものではないということである。

区切る煙草

私たちは、食後の煙草が食事のシメなのではないかということから話し始めた。そして、食後の一服がないと、ご飯の時間が終わっていないように感じてしまう喫煙者特有の感覚が、煙草の良さではないかと思った。そこで、私たちは一緒にご飯を食べ、一緒に煙草を吸うという、とても単純な方法を通して食後の煙草について考えることにした。今学期はこのようなフィールドワークを10回行うことができた。その中で、ご飯を食べる店での喫煙の可否、吸った煙草の本数、吸った場所などを記録した。2人でご飯を食べた際は、私たちの近況や共通の趣味や勉強についてありふれた話をした。例として、6月20日の湘南台にある喫煙可能な居酒屋で行ったフィールドワークを紹介する。私たちは日が暮れた時間に湘南台駅で待ち合わせをした。事前に決めていた「かずどん」という喫煙可能店に入ると、店主が煙草を吸っていた。彼は私たちに気がつくとすぐに火を消し、席へと案内した。普段なら注文した後に煙草を吸うが、このときは煙草を吸わず、ご飯の到着を待った。その後10分ほどでご飯を食べ終えて、好きな映画の話をしながら店内で煙草を2、3本吸った。私たちは店を後にして駅に向かい、駅の喫煙所で煙草を1本吸って解散した。このフィールドワークから私たちが気づいたことは、食後の喫煙が2つの働きをしているということだ。1つ目は、食事中の会話を継続させることができる「余韻」を生み出すということ。そして2つ目は、食事の時間を終わらせて一旦「区切る」ということである。
 
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