「フィールドワーク展」のフィールドワーク ::: 緊張度

緊張度

フィールドワーク展には、加藤研をあまり良く知らない人や関わりのない人などの外部向けの雰囲気と、加藤研メンバーの家族や友達など内輪向けである雰囲気が混在していた。そんな環境の中では、来場者が加藤研にどれだけ近い存在であるかによって、緊張度は変わってくる。私は「ライン」の展示スペースにある椅子に注目することで、緊張度がどのようにして展示会場内で表に出てくるのか、垣間見ることができた。

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私が注目した展示では、テレビの前に背もたれのない丸椅子が五つ並んでいて、好きな時に好きな椅子で映像作品を見ることができる。観察していると、両端の椅子が人気だったり、ヘッドホンの掛け方が人によって違っていたりして面白い。中でも特に興味深かったのが、鞄を置く場所と姿勢である。鞄については、身につけたままの人も多かったが、床に置く人はそれを自分の右側に置くのか、左側なのか、前なのか、など選択肢がある。また姿勢については、ピンと背筋を伸ばす人と猫背の人、足を組んでいる人と組まない人などがいる。

その中で、特に如実に緊張度の差が見て取れた二人がいた。一人は男性で、五つある椅子の真ん中を選び、右足を組んで荷物を自分の真後ろに置いていた。椅子はすべて空いていたにも関わらず真ん中を選んだこと、座ってすぐに足を組んだこと、そして何より荷物を自分の目の届かない場所に置いたことから、彼の緊張度はとても低かったのだろう。案の定彼は加藤研に知り合いがおり、安心してリラックスできる環境であったことが伺えた。

もう一人は女性で、とても緊張度が高いようだった。彼女は一番左の、机と少しばかり近すぎる位置にある椅子を選び、鞄は自分の左前あたりに足で挟んで置いていた。またヘッドホンも、頭に付けるのではなくあごの下から両耳に付けており、いつでもすぐに取り外しできそうである。その場にいた加藤研のメンバーと知り合いである様子もなかったことから、彼女にとって、展示会場はアウェイな場所だったのだ。

こういうことは、考えてみれば当たり前だが、なかなか目を向けることがない。しかし、外部向けでありながら内輪の空気も濃かった展示会場だからこそ、緊張をほぐしてゆっくり展示を見られる人と、内輪のあたたかさを感じながらも緊張してしまう人を見ることができたのだろう。自分が緊張したときはどのような格好になっているのか、考えてみるのも面白そうだ。

(中島彩也香)