創造と会話を楽しむ空間
今回フィールドワーク展Ⅹで私が採集対象に選んだものは、「*」というゲームのルールだ。「*」とは、OBOG展に展示されていた、2004年卒業の大山徹さんと島田賢一さんによる作品である。採集の間、ゲームボードを挟んで人々がとる行動と、作品が周囲に与える影響の観察を行った。
「*」には、マス目が64個あるゲームボード、6面に異なる色の*が描かれたキューブ、そしてそのキューブがぴったり収まるフタが用意されている。パーツはすべて木製で、木の香りがし手触りもよい。一番の特徴はルールがないということだ。来場者と制作者、来場者同士、制作者同士が即興でルールを作り遊ぶことがこのゲームの主旨だ。アイデアを共有するために、提供する人も聞く人も自然と集中力が高まり、会場の角の小さな空間で、密度の濃い会話が交わされていた。「*」には自然とコミュニケーションを生み出す仕掛けがあり、フィールドワーク展Xをより楽しく創造的な空間にする手助けをしていた。
開催中、様々なルールが誕生したが、どれもが簡単に作られた訳ではない。上手くいかなければその都度話し合い、試行錯誤しながらゲームは進められていた。一通りのルールが完成すると、理解できた喜びや楽しさからもう一度遊びたくなる。気が付くと人々は長い時間ボードの前で過ごし、初対面の人ともすっかり打ち解けていた。しかし同時に「*」は一度ゲームが始まると、展示会場という空間から切り離され、4人だけの世界になってしまうという側面もあった。
ゲームが進化することもある。展示初日、来場者が「*」で神経衰弱をしようとランダムにキューブを並べフタをした。皆に親しみのあるルールだったため、子供も楽しめていた。しかしキューブをランダムに置いたために色が揃わず、ペアが出来ないキューブを残したままゲームが終わってしまった。次の日、別の来場者が前日の神経衰弱のルールを改善した。キューブの数を64個から18個に減らし、ペアが出来てもフタは元の場所に戻す。すると空箱を選んでしまうリスクが生まれ、より楽しめる遊びを創造することが出来たのだ。
フィールドワーク展Xは、作品を静かに鑑賞する通常の展示会場と違い、制作者と来場者がインタラクティブに関われる空間があちらこちらに出来ていた。その中でも「*」は自由度が高く、大人も気軽に会話が楽しめる街角の遊び場のような空間を作り出していた。
(白羽相仁亜)


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