「フィールドワーク展」のフィールドワーク ::: 意識が生み出す空間

意識が生み出す空間

フィールドワーク展X「じゅじゅじゅ」。横浜創造都市センターで4日間行われたこの展示を見に来る人は、いったいどのような心意気で会場にやって来るのだろうか。横浜散歩のついでか、将又展示をその日のメインに掲げているのか。展示に対する姿勢はその日の服装や持ち物にも影響する。そこで私は来場者の鞄を採集することで、加藤研の成果を披露している空間がどのような意識を持って来る人で構成されていのかを調査することにした。

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採集を通して発見したことの一つとして、「両手フリースタイル」の来場者が非常に多かったことを挙げたい。これは鞄を手に持つ行為によってどちらかの手を塞ぐ、という状況を避けているスタイルである。今回40人のスケッチを行うことができたが、そのうち12人がリュックサックであり、13人が鞄をクロスに肩に掛け、15人が片方の肩に掛けて両手を空けていた。そして、多くの人は荷物を一つにまとめており、自由に展示物に触れながら会場を歩いていた。さらに、床に荷物を置くという煩わしい動作もあまり見られず、両手を空けることは展示に集中しやすい環境をつくるのだと感じた。
また、お店の紙袋を持つ者を発見することはなく、このことから来場者は会場に直接足を運んだ、あるいは会場での時間を考慮し、邪魔になるであろう袋をしまえるサイズの鞄で来ていると予想できた。来場者の多くは、じゅじゅじゅに来ることをしっかりと視野にいれ、展示空間でストレスとなるものを減らして来ているようだった。
二つ目の発見は、鞄の色や柄が落ち着いたものであったということだ。調査した40人のうち21人は黒い鞄を、8人が茶色系統の鞄を持っていた。これらは柄も少なく、無地のものが多かった。

このことから、じゅじゅじゅ展が自分の個性を周りに見せる場ではなく、展示物を尊重したある程度重みのある場として捉えられていると感じた。その意識もあってか、短時間で会場をあとにする人はあまり見られなかった。しっかりと作品一つ一つを鑑賞し、落ち着いた雰囲気で長い時間滞在する人が多かったのだ。
私たちの一年間の活動の成果報告とともに、10周年を向かえた加藤研の生き様を紹介した今回の展示。そこにかける私たちの想いが来場者にも伝わっていたのかもしれない。展示に真剣に向き合う人々がいたからこそ、この展示は成功したのだということを今回の採集は教えてくれた。

(井上千聖)