加藤文俊研究室

条件/制約と装いの関係性

2017年11月、慶應SFC主催のOpen Resarch Forumは六本木にある東京ミッドタウンで開催された。イベントの趣旨はSFCで行われる調査・研究を一般公開する事。2日間とも予想以上に大賑わいで、展示スペースのピーク時は通路を移動するのも一苦労だった。このように両日とも大勢の人で溢れた会場だったが、人々の"装い"は違っていた。初日深夜から降り出した雨は昼過ぎには止んでいたが、早くから足を運ぶ人々の格好や持ち物は雨という"制約"に影響されていた。特に会場内に置かれた「傘」はそれを物語るアイテムだった為、展示スペースに並べられた「いろんな傘」を例に人々の装いの工夫を観る。

 

撮影時は最終日の片付け終盤、展示に使った木材パネルは傘立てならぬ「傘掛け」に早変わりし、そこにはビニール傘2本とその他3本が並べられていた。新品に近い透明の"綺麗なビニール傘"、使い古された骨組も壊れかけの不透明な"汚いビニール傘"、目が冴えるような紅色の"ヨーロッパ風な傘"に、ベージュ地に淡い水色と紫色の水玉模様が施された"お嬢様風な傘"、そしてネイビー地に淡いブルーとピンクの花柄があしらわれた"都会風な傘"があった。これら「いろんな傘」を各々が家を出る前に選択する行為や、ORFにくる人々の装いには、その日の条件/制約に基づく工夫があった。出店者側を観ると、装いは研究会によつて異なる(ターゲットに依存)のだが、スーツ組や、お揃いのオリジナルTシャツ組、そして全くの自由組があった。スーツ組の中には、革靴ではなくサイドゴアブーツを履いている人がいたし、逆にお揃いTシャツ組は(半強制的にカジュアルになるからか)装いへの無関心(諦め)が観えた。他方、自由組ではその日に会う(かもしれない)人を意識したり、ORF前後の予定(インターンや打ち上げ)を考慮したり。もちろん「傘」の選択も六本木という地域性が影響しただろう。これら様々な装いは、ORFというフォーマルな"社交場"という前提条件とその他個別具体的な条件/制約か作用していた。そんな中での工夫こそ、展示物より何よりも人々が生み出す個性であり創造力だった。

(有馬一起)