加藤文俊研究室

「誰でも」参加可能です

私にとって今年度のORFでもっとも印象に残った光景は、ホールの出入り口の隅っこに子ども二人と学生らしき女性が座り込んでいる姿だった。内容はわからないが、リラックスした様子で談笑していた。
ここでの発見は二つあった。まず、空間の使い方という点だ。ポスターセッションが目的である多くの人にとって、この出入り口はただの通過点だから、誰も立ち止まらない。けれどよくみると、その空間はけっこう広い。彼女たちが座り込んでいても、人はじゅうぶんその横を通過することができる。休憩場所があまりないORF会場だが、なるほど、ここはデッドスペースだ。毎年、混雑を極める会場内でうまく息を抜くにはどうしたら良いか考えていた私だが、このアイディアは思いつかなかった。

きっと私の中で休憩スペースを考える際、ここは勝手に排除されていたのだろう。空間そのものの特性をみることができず、出入り口は通過点だという思い込みによって。彼女たちがどのような経緯であの状態になったのかわからないが、きっと子どもたちにとってはごく自然な行為なのだろうと思った。どこだろうと関係なく、心地良く居られるところに居る。
二つ目の発見は、ごく単純に「ORF会場にも子どもがいるのだなあ」ということだ。無料で誰でも入れる場所なのだから、当然のことだ。しかし、私はこの光景を見るまで、子どもがここにいることを意識したことがなかった。子どもに着目してあらためてORF会場を観察すると、彼らはポスターの周りにいたりベビーカーに乗ったり、大人に抱っこされたりしていた。しかし、学生は子どもには研究の説明をしないし、ホール内はベビーカーを押してまわるような空間的余裕がないように思えた。
「誰でも」参加できるけれど、ORFは大人のためのものなのだ、ということを実感した。子どもを連れた人にとっては、不便な点があるのだろうと思った。何も、子ども連れにやさしいORFをつくろう!と、となえたいわけではない。子どもの話は一例である。「誰でも」参加可能な、公にひらかれる展示などを実施する際には、いろいろな可能性が隠れている。誰がどんなふうにやって来るのか、どうやってその空間で過ごすのか、なるべく想像力を広げて設計するべきなのだろう、と思ったのだ。

(橋本彩香)