加藤文俊研究室

The first ORF

SFCは、「世界につながる」教育・研究機関であることを目指して、グローバル(地球規模)な人材育成と研究活動を実施すると宣言している。はたして、海外からの留学生がいきいきと学び、活躍できる場づくりは、実現できているのだろうか。あるいは、どうすればそのような場づくりが実現できるのだろうか。この問いにこたえるためには、当事者である留学生の経験を理解する必要がある。そこで、研究室でともに学ぶクリサが、留学生として大学院生として、初めてのORFをどのように経験したかを、映像民族誌的なアプローチで調査することにした。外国からの移住者の経験を理解する上で、映像民族誌的なアプローチが有用であることは、すでに別の論文で議論したので詳しくはそちらを参照いただきたい(論文:大橋香奈・加藤文俊、トランスナショナルな生活世界を生きる個の理解を目指して ―映像民族誌的方法の実践的検討―、生活學論叢、日本生活学会、 Vol.30pp15-282016年)。
 
クリサは、ORF期間中に、研究室の展示ブースでの訪問客への説明、個人で実施した研究プロジェクトのポスター発表、研究室で与えられた課題のための調査に取り組んだ。そこで私は、ORF前日のポスター発表の準備、ORF1日目と2日目の彼女の活動に、可能な限り同行し、その様子を観察して映像で記録した。また、ORF終了後、1回2時間程度のインタビューを4回行い、クリサがORF期間中に何を経験し、そのことにどのような意味があると考えているかを探った。インタビューにおけるやりとりの中では、多様な「ナラティヴ」が生み出される。個々の独立した「ナラティヴ」が、インタビューを重ねる中で整理され、出来事相互の関係や意味を示す「プロット」が加わった「ストーリー」になる。その「ストーリー」をもとにナレーション原稿を組み立て、クリサの母語であるギリシア語で読み上げてもらい、それを録音した。その録音データをもとに、映像作品を制作した。出来上がった映像作品にはクリサに協力してもらい英語字幕をつけ、それをもとに私が日本語字幕をつけた。この作品は、私の課題として制作したものだが、私とクリサの協働作品だと考えている。

(大橋香奈)